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ふぇみんの書評

ゆるぎなき自由 女性弁護士ジゼル・アリミの生涯

ジゼル・アリミ、アニック・コジャン 著 井上たか子 訳

    ゆるぎなき自由 女性弁護士ジゼル・アリミの生涯
  • ジゼル・アリミ、アニック・コジャン 著 井上たか子 訳
  • 勁草書房2400円
20世紀後半のフランスでボーヴォワールとともに性差別に対して闘い続けた弁護士ジゼル・アリミの生涯をインタビューによってたどる書。男尊女卑の家庭で育ち、23歳で『第二の性』に大きな衝撃を受ける。それまで経験的・本能的に感じていた苦しみや怒りを言葉にし、その原因を解き明かしてくれたからだ。  「昆虫学者」のように常に冷静な態度でアリミを戸惑わせもするボーヴォワール、アリミが「父親のように愛した」サルトル、「わたしは中絶した」という〈343人のマニフェスト〉に共に署名するサガンやドヌーヴ。女性の尊厳を守るために手を結ぶ人々の姿を生き生きと感じられるのも、本書の魅力である。  本書の刊行直前、アリミは93歳で逝去。“ネットに#MeTooと書き込んで終わらず、助け合いのネットワークを作って女性同士の友愛を大切にしてほしい、力を合わせれば大きな動きになる”。これがアリミのメッセージである。(雪)

一万年生きた子ども 統合失調症の母をもって

ナガノハル 著

  • 一万年生きた子ども 統合失調症の母をもって
  • ナガノハル 著
  • 現代書館2000円
近年「ヤングケアラー」が認知され、精神障害の親を持つ子どもも声を上げつつある。本紙連載「こんな私ですが フェミニストです」の著者は、30年以上前から統合失調症の母をケアしてきた。  著者は8歳の時、電車の床で大の字になった統合失調症の母を、1人で電車から降ろす際に、「黄金の体」と「一万年生きてきたかのような大人の心をもった子ども」になったという。母の妄想を誰よりも理解し、母を差別し排除する社会との間に立ち、?神”のごとく上手く立ち回り母をコントロールしようとした子ども時代。しかし成長した著者はやがて精神の病を得る。「人生すべて後遺症」。病以外の病的な思考・行動パターンも。著者は気づき、向き合い、折り合いをつけて生きる方法を探る-。  著者はあえて「ヤングケアラー」という言葉を使わなかった。本書をありのままに受け止めることで、社会にはびこる精神障害への差別の根深さと罪深さ、著者の命の輝きが見えてくる。(王)

近代を彫刻/超克する

小田原のどか 著

  • 近代を彫刻/超克する
  • 小田原のどか 著
  • 講談社1300円
ふぇみん2020年12月5日号1面に登場し、連載「記憶と彫刻」も執筆した彫刻家で評論家の著者が、彫刻が設置/破壊された時代や状況から近現代史を読み解く。  ニューヨークの裁判所前に出現した男の首を持つメドゥーサ像(ギリシャ神話を元にした《メドゥーサの首を持つペルセウス》が暗喩に)、近代日本の武将像、米国・南軍の将軍像、そしてまるで生身のようなレーニンの遺体などから彫刻の社会的意味を考察する。  「国民的記念碑」による「国民教化」の意図が見える戦前の碑や像は時代が変わって議論され、撤去される。とは言え、戦後の「平和」と名の付く裸体の女性像や長崎の巨大な原爆祈念像は、果たして平和を祈念するものなのかと著者は問う。そして、ソ連崩壊やBLMで破壊された彫刻から読み取れるものは何か。東アジア反日武装戦線の《風雪の群像》爆破や、アイヌの彫刻家砂澤ビッキへの言及の鋭さに目を見張った。彫刻への好奇心が深まる。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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