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ふぇみんの書評

従順さのどこがいけないのか

将基面貴巳 著

    従順さのどこがいけないのか
  • 将基面貴巳 著
  • 筑摩書房840円
この国では、従順を“良し”とする風潮があるようだ。しかし、従順は思考や判断のない服従につながりがちだ。それが引き起こした悲劇は、歴史上数多あり、現在進行形でもある。  なぜ人は服従してしまうのか、忠誠心は美徳なのか、上からの命令には従うしかないと思う人間心理に始まり、私たちは何に従うべきなのか、良心や“共通善”を無視して良いのかという価値判断の問題に言及する。誤りであることに対し、不服従や抵抗をするとしたら、そのために必要なことは何か。本書が示唆する内容は、日本の学校教育からは完全に欠落しており、社会でも捨象されていることを、誰もが実感するであろう。  空気を読み、長いものに巻かれろ、面従腹背も世渡りの術とされる日本社会。英国で受けた教育を通し、ニュージーランドで教鞭を執る著者だからこそ、ごく当たり前のように行き着いた、この国に対する疑念と警鐘である。よりよい未来のためにも、若い人たちにこそ読んでほしい。(た)

戦争とバスタオル

安田浩一、金井真紀 著

  • 戦争とバスタオル
  • 安田浩一、金井真紀 著
  • 亜紀書房1700円
銭湯友達のノンフィクションライターの安田浩一さんと“絵ッセイスト”の金井真紀さんが旅に出た。訪ねたのは、泰緬鉄道を建設した日本軍が整備したというタイ「ヒンダット温泉」、1960年に水道がなかった沖縄コザで井戸を掘り開業した「中乃湯」、韓国の釜山やソウルでは沐浴湯・チムジルバン…と風呂をはしご、引揚者の要請でできた神奈川県寒川町の銭湯「すずらん湯」(廃業)、戦前日本最大の毒ガス工場のあった広島県大久野島の「せと温泉」。  金井さんの引き寄せ力と安田さんの取材の神様が出あわせたひと・こと・もの。  釜山近郊で生まれ、日韓を行き来し、流ちょうな日本語で演歌を歌い上げる90歳の崔秉大さん。毒ガス工場があった寒川町の相模海軍工廠の経験者の話は、大久野島へとつながる。14歳から工場で働いた藤本安馬さんは、毒ガス被害者ながら、「大久野島で鬼にされた」加害者であり、毒ガスと戦争の罪と恐怖を伝えることが任務と95歳の決意を語る。本書につづられる歴史と人生は深く広い。(ね)

アメリカンビレッジの夜 基地の町・沖縄に生きる女たち

アケミ・ジョンソン 著 真田由美子 訳

  • アメリカンビレッジの夜 基地の町・沖縄に生きる女たち
  • アケミ・ジョンソン 著 真田由美子 訳
  • 紀伊國屋書店 2300円
著者は日系米国人の研究者。初めての沖縄旅行で北谷町の「アメリカンビレッジ」を訪れ、沖縄の中で大きな存在感を示す米国の姿に関心を持ち、以来、米軍基地と共に生きる女性たちの物語を聞き続けた。  登場するのは11人の女性たち。度重なる米兵の強姦事件で日米政府に抗議する人々と共に、基地を受け入れる人々の心理も見つめる。「アメジョ」と揶揄されながらも米兵だけを恋愛対象にする女性たち、軍属で働くのは男女が平等に扱われ自己実現の道だと語る女性もいる。この選択をどう考えるか、読み手側も問われると思う。  沖縄では基地をめぐって世論が二分する。しかしそれによって人々が対立していると断定するのは表面的過ぎると著者は考える。人種混合の中のアイデンティティーの葛藤や、基地に“慣らされてきた”長い歴史など問題はずっと複雑だ。本書から、誰が何のために対立させられているのかを考えることが最重要なのではと理解した。(三)
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 6カ月4800円、1年9600円
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