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ふぇみんの書評

格差の自動化 デジタル化がどのように貧困者をプロファイルし、取締り、処罰するか

ヴァージニア・ユーバンクス 著 ウォルシュあゆみ 訳

    格差の自動化
  • ヴァージニア・ユーバンクス 著 ウォルシュあゆみ 訳
  • 人文書院2800円
「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」。前デジタル大臣が“デジタルの日”の標語として掲げた気色悪いフレーズは、それでも日本で、デジタル化が平等な社会福祉に結びつくという幻想をバラまくのに役立ったのかもしれない。  本書はデジタル先進国・アメリカで、福祉のデジタル化が、タイトルにあるように“格差の自動化”という効果しか生み出さなかったことを告発する。たとえば、福祉サービス受給資格の判定の自動化、ホームレスの人々向けの電子登録システム、どの児童が将来虐待や育児放棄の犠牲となるかを予測するリスク予測モデル、などへの丹念な調査をし、その結果からいかにデジタル化が貧困層をプロファイルし、取締り、処罰するか、が浮かび上がる。  日米問わず、デジタル化が「価値中立的」だというまやかしを木端微塵に粉砕してくれる、貴重な記録として読みたい。(宮)

私のおばあちゃんへ

ユン・ソンヒ、ペク・スリンほか 著 橋本智保 訳

  • 私のおばあちゃんへ
  • ユン・ソンヒ、ペク・スリンほか 著 橋本智保 訳
  • 書肆侃侃房1600円
韓国で出版され、「誰も注目しなかった“おばあちゃん”の存在を前面に出した初めての小説集」である本書は、現在30~40代の韓国の女性作家6人が6様の“おばあちゃん”を書いた。  作家たちは世にはびこる、寛容で可愛くて無害で、都合のいい“おばあちゃん”像を破壊し、孤独だったり、子どもに悪態をついたり、高慢だったり…。多様な“おばあちゃん”が物語を織りなし、家父長制に耐えた“おばあちゃん”への作家の哀悼も見え隠れ。特に息子家族と滞在したフランスで恋をした“おばあちゃん”を孫が語る「黒糖キャンディー」(ペク・スリン)は深い余韻が残り、老人が階級と健康状態により“ユニット”に収容される近未来を舞台に移民問題や世代間闘争を描いた「アリアドネーの庭園」(ソン・ウォンピョン)はリアルな恐怖を味わった。  “おばあちゃん”の多様な生はきっと、“おばあちゃん”自身による〈おばあちゃん文学〉を生み出すのではないかと予感する。(藍)

私はイスラム教徒でフェミニスト

N・エル・ブガ+V・ゲラン 著 中村富美子 訳

  • 私はイスラム教徒でフェミニスト
  • N・エル・ブガ+V・ゲラン 著 中村富美子 訳
  • 白水社2200円
フランスで人気の性科学者による自伝的エッセイ。モロッコ出身の移民労働者の娘としてパリで育った著者は、診療室でカウンセリングを行い、フリーランスの助産師として活動し、ラジオ番組で性について語る。  敬虔なイスラム教徒だが、著者によれば、イスラム教徒でフェミニストなのは矛盾しない。本来イスラムの聖典は女性の抑圧を認めてはおらず、「父権的で古臭い解釈」が聖典をゆがめてきた。だから聖典を再解釈して時代に合った訳を作りたい、信仰のためのベールを抑圧の象徴と「フェミニスト」から見られるのは悲しい、という。  中絶を非難されれば「助産師としての私の使命は、なにより相手に敬意をはらい、本人の自己決定権をまっとうできるよう寄りそうことだ」と反論し、「性の営みは与え合い互いに幸せにしようとすること」と述べる著者には、とても共感した。序「今夜は……」の甘美なことといったら! ドキドキしてしまった。(雪)
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