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ふぇみんの書評

教科書と「慰安婦」問題 子どもたちに歴史の事実を教え続ける

平井美津子 著

    教科書と「慰安婦」問題 子どもたちに歴史の事実を教え続ける
  • 平井美津子 著
  • 群青社 発行 星雲社 発売2000円
私もこんな授業を受けたかった。元「慰安婦」の金学順さんが名乗りを上げ、教科書に「従軍慰安婦」が記述されるようになった1997年度から慰安婦の授業をしてきた大阪府中学校社会科教員の著者。歴史の事実を知らせたいとの思いに加え、当時は中学生にまで「援助交際」が広がり、子どもたちに自分の性のあり方を決定する大切さを知らせたいと授業をした。以来、その時々の話題を取り入れて授業展開をし続けてきた。  「慰安婦」が教科書に記載されたのも、されなくなったのも、政権の教育政策や歴史認識、それをめぐる市民や学者の闘いによる。それを実証するように、敗戦直後から現在に至るまでの各社の歴史教科書の記述を比較する。なかでも、家永三郎さんが自身の執筆した教科書が検定不合格とされ、長く闘った「家永教科書訴訟」が教科書検定に多大な好影響を与えたことなどが、詳細な資料とともに紹介される。「慰安婦」記述が教科書から消えた今こそ必読の書。(k)

大田洋子 原爆作品集 人間襤褸/夕凪の街と人と

大田洋子 著 長谷川啓 編

  • 大田洋子 原爆作品集 人間襤褸/夕凪の街と人と
  • 大田洋子 著 長谷川啓 編
  • 小鳥遊書房3600円
1945年、広島市の妹の家に疎開していた著者は原爆に被災。以後、原爆症発病の恐怖と闘い、「原爆もの作家」と批判されても原爆を主題とする作品を発表し続けた。本書は同じ編者による『屍の街』に続く、12編の原爆作品集。  被爆者や破壊された街の惨状が、恐ろしいほどリアリティーをもって迫ってくる「人間襤褸」。「夕凪の街と人と」では、被爆者、引き揚げ者、朝鮮の人が暮らすスラム化された街に住む人々を活写。市井の人々の怒りや悲しみ、見せかけの復興の欺瞞性を問う。  未来をも破壊する原爆の怖さ、民の命を軽視する日米の権力の冷酷さ・無責任さを告発し続けた著者。「棄民」という言葉が頭をよぎる。戦争、基地、原発…等々。私たちは何度見棄てられ、一方で、痛みの忘却に加担してしまうのか。大田の苦悩と覚悟を引き受けて、「大田が苦闘した時代と変わっていない状況」に「抵抗の意志を込めて刊行した」という編者渾身の解説を手に、今読むべき作品集と強く思う。(ん)

二重に差別される女たち ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム

ミッキ・ケンダル 著 川村まゆみ 訳

  • 二重に差別される女たち ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム
  • ミッキ・ケンダル 著 川村まゆみ 訳
  • DU BOOKS 2800円
アメリカのフェミニスト運動を白人女性がけん引する限り、マイノリティーの女性たちは人種差別の上、女性であることで二重に差別されるだろう。著者のミッキ・ケンダルは米国黒人女性。白人至上主義の家父長制を前提としたホワイト・フェミニズムは、女性よりも白人の特権を優先すると述べている。人種偏見による思い込みはフェミニズムの運動に歪みを与え、全体を俯瞰せず、女性全体の地位向上を妨げる。ニーズが満たされている白人女性のフェミニズムは、黒人女性の貧困には目をつぶり、有色人種への機会の不平等を生み、最も弱いものを救えない。  フッドと呼ばれる低所得地域で生まれ育ったケンダルは既存のフェミニズムが言葉だけの学術的理論にすぎず、重要なことはそれを必要とする人々のために行動することだと考える。ホワイト・フェミニズムは偏狭なエゴを捨て、共闘するフェミニストになるときだ。(ぶ)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4800円、1年9600円
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 郵便振替:00180-6-196455
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