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ふぇみんの書評

「日韓』のモヤモヤと大学生のわたし

加藤圭木 監修 一橋大学社会学部加藤圭木ゼミナール 編

    「日韓』のモヤモヤと大学生のわたし
  • 加藤圭木 監修 一橋大学社会学部加藤圭木ゼミナール 編
  • 大月書店1600円
 K-popや韓ドラが大好きな若者が増え韓国文化は身近に。しかし8月15日の“推し”の「反日」メッセージや推しの兵役、推しが使う「慰安婦」グッズ、周囲の「嫌韓」発言、日韓政治の「対立」など、ファン活動にモヤモヤが募る。本書は、韓国人留学生も含めた大学生たちがそのモヤモヤについて徹底的に腹を割って話し、原因を突き止め、真実を探求し、未来に向けた行動を考える過程が描かれる。  最初は「文化と政治は別」「日韓の対立は話し合えば解決できる」などと考えていた学生らが、日本の植民地支配や日本軍「慰安婦」に関する歴史資料に基づく真実を学ぶことで、次第に植民地支配加害者としての歴史を知り、その責任を若者世代として問わなければ、真の交流は成り立ちえないと思い至る。時に自分自身に巣くう人種や性の差別感情にも向き合い、度々モヤモヤしながら進むかれらの旅程は、若い世代だけでなく広い世代にとって、新鮮で感動的で大いに示唆に富む。(一)

咲ききれなかった花 ハルモニたちの終わらない美術の時間

イ・ギョンシン 著 梁澄子 訳

  • 咲ききれなかった花 ハルモニたちの終わらない美術の時間
  • イ・ギョンシン 著 梁澄子 訳
  • アジュマブックス2700円
日本軍「慰安婦」被害者たちが描いた絵には、心をえぐられる印象深い作品がたくさんある。「奪われた純情」(姜徳景作)「咲ききれなかった花」(金順徳作)等々…。彼女たちに実は“美術の先生”がいた。美大を卒業し、1993年から5年間、ハルモニたちが暮らす「ナヌムの家」で絵を教えた著者が、美術の時間を懐かしく振り返る回想録。  性暴力を受け、戦争で死の淵を経験し、故郷にも帰れなかったハルモニたちが、苦しい過去と向き合い、秘めた感情を絵で表現するまでには、多くの過程が必要だった。謝罪もなく責任もとらない日本政府や被害者を侮辱する政治家たちへの激しい怒りを力としていくハルモニたち。暗中模索しながら、温かく根気よく表現へ導く先生。恐る恐る描いていたハルモニたちが仲間にも刺激を受け大胆に表現するようになる場面は本当に感動的だ。絵がハルモニたちの人生をどれだけ豊かにしたことだろう。被害者支援を長く続ける訳者による翻訳が心に沁みる。(ぱ)

帰還兵の戦争が終わるとき 歩き続けたアメリカ大陸2700マイル

トム・ヴォス、レベッカ・アン・グエン 著 木村千里 訳

  • 帰還兵の戦争が終わるとき 歩き続けたアメリカ大陸2700マイル
  • トム・ヴォス、レベッカ・アン・グエン 著 木村千里 訳
  • 草思社2000円
著者は米陸軍の兵士として2004年、激戦地イラク・モスルで1年間、戦闘任務に就いた。帰国後も、目撃や実行したことへの嘆きや罪悪感などの感情が襲い、酒や薬物におぼれ、自殺念慮に捉われる。  生きるため、同じく兵士だったアンソニーとアメリカを横断する4345㌔の徒歩の旅に出る。2013年のことだった。5カ月の旅の後、「モラルインジャリー(道徳的負傷)」という言葉を知る。屈辱感と罪悪感と悲しみに着目した新たな概念が、自分を正確に言い表していると著者は感じる。本書は旅に出るまでの苦しみの日々、長旅でのさまざまな出会いと、折々、彼をとらえるイラクでの記憶がつづられる。  アメリカでは1日換算で20人もの復員軍人が命を絶っているという。戦場に駆り立てられた若者たちへのケアが不十分なままに、国家は戦争に邁進する。「復員軍人が英雄視されがちなのを知っていますか?…でも戦場には英雄は一人もいないんです」。これはアメリカだけの話だろうか。(ね)
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