WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

生きるためのフェミニズム パンとバラと反資本主義

堅田香緒里 著

    生きるためのフェミニズム パンとバラと反資本主義
  • 堅田香緒里 著
  • タバブックス1700円
「私たちはみな、資本主義という恒常的な災害の被災者である」。巻頭の言葉は、「リベラル・フェミニズム」と女の不払い労働に大いに依存し女の生を搾り取る今の資本主義=ネオリベラリズムを喝破する。ベーシックインカム論などで知られる社会学者による初の単著は、コロナ禍で女への被害があからさまになった今こそ読みたい、まさに私たちの生存のための書。  パン(生きていける賃金)もバラ(尊厳)もよこせ!それは決して贅沢ではなく、歪んだ構造を正す根源的で普遍的なものであると、さまざまな例を挙げ著者は説く。ネオリベラリズムと結託するフェミの罠、町の浄化、開発、世界で取り組まれる日常の抵抗運動…。さらになぜ著者が今にいたったかの背景が描かれるのも興味深い。野宿者との交流、野宿女性との出会い、自分の立ち位置の葛藤、野宿者支援の中の性差別…。女がセーファーに生きることの社会へのヒントに溢れる、生きたフェミニズムに出合える。(令)

社会思想としてのクラシック音楽

猪木武徳 著

  • 社会思想としてのクラシック音楽
  • 猪木武徳 著
  • 新潮社1600円
音楽がいかに政治や経済の影響を受け、またいかなる影響を与えてきたのか。  教会聖歌の伴奏でしかなかったオルガンや器楽は、やがてクラシックの主役に。モーツァルトは司教との確執で貧乏フリーランスとなり、結果的にすばらしい音楽を後世に残した。パトロンは有害無益? 大衆を酔わせるワーグナーの音楽は、ナチスにとって好都合だった。ショスタコーヴィチの、粛正を回避しながらのスターリン批判。西洋クラシックと社会の関係、音楽とデモクラシーとの関わりを斬る。  経済原理だけが優先され、利益を生み出さないものは無駄と捉えられがちの今日。芸術は人間の魂と深く関わる、人間存在の本質に位置するものだという著者は経済学が専門だが、教養を、専門性の浅い雑学としかみなすことのできない狭量な学者にはとうてい書けない、内容の濃い一冊だ。音楽がリベラル・アーツの一部とされている理由も、本書から見えてくる。教育に携わる者こそ読んでほしい。(た)

見出された縄文の母系制と月の文化〈縄文の鏡〉が照らす未来社会の像

高良留美子 著

  • 見出された縄文の母系制と月の文化〈縄文の鏡〉が照らす未来社会の像
  • 高良留美子 著
  • 言叢社3600円
詩人、評論家の高良留美子が、その生涯にわたって探求してきた「月女神」、母系制、海民、蝦夷…等、日本正史の裏面を多様な文献や、土偶、遺跡などからも解き明かす。原始乱婚説から、自由意志的分業、ボーヴォワールに至る女性の位置づけを検証していく。そして古代日本の被差別者であった海民は、月信仰を持つ縄文的な芸能の民であったと。またエコフェミ論争について、自然=物と考える自然観を克服して、生きた自然観、女性観を回復するため、自然をひとつの生命体、生態系としてみることが必要であると言う。さらに高群逸枝の『母系制の研究』の批評史を詳細にたどり、「高群は、世界史的に敗北した月族=女性の復権に生涯を賭けた」、「元始、女性は月であった」と宣言されなければならなかったと述べ、多性具有的な文明が必要…など、多くのテーマに言及し人類の希望、「共(コモン)」を指し示した。(渡)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ