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ふぇみんの書評

アンダーコロナの移民たち 日本社会の脆弱性があらわれた場所

鈴木江理子 編著 田中雅子、山岸素子ほか 著

    アンダーコロナの移民たち 日本社会の脆弱性があらわれた場所
  • 鈴木江理子 編著 田中雅子、山岸素子ほか 著
  • 明石書店2500円
本書が論じるのはコロナ禍で困窮する移民たちの脆弱性ではない。活発な支え合い活動が示すように、本来は大きな力をもつ移民たちを弱者にしている、日本社会の脆弱性だ。  在留資格によって移民を細かく分断しながら市場に配置し、目に見えない「他者」としてきた制度の問題は、すでにリーマンショックで明らかだった。にもかかわらず、正面からの労働者受け入れに舵を切ってもなお社会統合を怠ってきたことが、今日の危機をもたらしたのだ。23人の執筆者らは、多様な移民たちがおかれた状況を多角的に分析し、他国の実践にも目を配りながら、移民たちが社会の不可欠な一員としてともに生きられる社会に向けて、実践的な変容を促す。最も保護を必要とする者ほどとりこぼされる「セーフティネットの逆転」等、ジェンダーとも交錯する重大な病巣の根本にいま切り込まなければ、次の危機は必ず訪れる。その警告を受け止め行動するために必読の一冊。(も)

子どもたちがつくる町 大阪・西成の子育て支援

村上靖彦 著

  • 子どもたちがつくる町 大阪・西成の子育て支援
  • 村上靖彦 著
  • 世界思想社2500円
大阪市西成区の北部、釜ヶ崎は日雇い労働者の街として知られている。生活保護受給率も高く、ひとり親家庭や外国人家族も多く住む。確かに、生活がしんどい人たちがたくさん住んでいるちょっと物騒な町、というイメージがつきまとう。でも、実は子育て支援のシステムがとても手厚く機能している地域であるということは、大阪で子育て支援に携わっている者なら誰でも知っている。  この本でインタビューを受けている彼らは、外に出ていき、子どもたちと出会い、困りごとを可視化していく。彼らが西成でどんな風に動いているのか、その活動はどのように作られ、どう機能しているのか、子どもに対する視点、子どもと(時にはその親たちと)どう関わりをもとうとするのかが、くっきりと見えてくる。  彼らの語りをていねいにすくい取り、語り口をそのまま表現する中から、子育て支援の本当の姿が立ち上ってくる。タイトル通り、町の姿が見えてくる。(J)

ケア宣言 相互依存の政治へ

ケア・コレクティブ 著 岡野八代ほか 訳

  • ケア宣言 相互依存の政治へ
  • ケア・コレクティブ 著 岡野八代ほか 訳
  • 大月書店2200円 
ケアをめぐる世界的な危機に取り組むことを目的に、英・ロンドンで活動を開始した研究者らのグループによる本。1982年から広まったケア理論は、コロナ禍で露呈したケア欠如を前に、ますます活発になっている(訳者解説)。  ケアとは介護や育児のみならず、人間と地球上の生物が生きながらえることが可能となる諸条件を提供する、個人的かつ共同的な私たちの能力。本書は、生のあらゆる局面(政治、親族、コミュニティ、国家、経済等)において、ケアを前面かつ中心に置いた「普遍的ケア」を提唱。面白いのは、ケアを中心にした途端、民主主義も経済も、私たちの生存と開花にふさわしく回り始め、伝統的家族の縛りや差別、排除、国境さえも無効化する力が明らかに。世界各地に今あるケア共同体の例が豊富なのも本書の特徴だ。  普遍的ケア社会は、新自由主義が提示する自己像(自律的個人)の変革を伴う。まるで革命のよう。しかも実現可能な革命だ。(情)
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