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ふぇみんの書評

日本の男性不妊 当事者夫婦の語りから

竹家一美 著

    日本の男性不妊 当事者夫婦の語りから
  • 竹家一美 著
  • 晃洋書房2800円
不妊に関する調査研究の多くが女性を対象とする中、男性は自らの不妊をどう経験するのか、また現在の日本社会で男性不妊はどう位置づけられているのかを探る本。  貴重なのは、無精子症のためにTESE、つまり精巣から精子を回収するという高度に侵襲的な手術を受けた男性(と妻)の語りであろう。男性は「精子ゼロ」など検査による?証明”で自身の不妊性を自覚するらしいこと、また著者が「無精子症物語の主役は、夫ではなく妻」と書いているのは興味深い。しかし重要なのは「少子化を背景に男性不妊の『医療化』が加速された」「男性身体も政治・権力の管理対象になったということではないか」という著者の指摘だ。  終章で著者が書く「生殖におけるジェンダー平等」が何を指すのかはいまひとつ不明だったが、「語ること」を通じ、性・生殖への政治的介入や意識操作、市場化に抗する仲間としての「男性」が立ち現れてくるのであれば、歓迎したい。(R)り拓くヒデの生き方は、人間として惹きつけられずにはいられない。一度お会いしてみたかった!(タ)

サハマンション

チョ・ナムジュ 著 斎藤真理子 訳

  • サハマンション
  • チョ・ナムジュ 著 斎藤真理子 訳
  • 筑摩書房1500円
『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者が、それよりも早く執筆を始め、7年かけて完成させた本書。  企業が自治体を買い取った「タウン」という超格差社会の都市国家。「住民」になれるのは、資本や技術、専門知識がある者だけ。あとは2年の在留資格のある「L2住民」と最下層民「サハ」。姿を見せない7人の共同総理制で、30年前の民衆暴動鎮圧を経て、市民の自由はない。過重労働を担うのも感染症で亡くなるのも、犯罪予備軍とされるのも下層民。そんな中サハが住む「サハマンション」を舞台に、さまざまな属性と背景を持つ個性豊かな住民が、虐げられた環境の中で心を通わし、助け合う。そして弟と仲間のために政権中枢に乗り込んだ女(ジンギョン)が見たものは-。  世界を跋扈する新自由主義の究極版のような設定は、妙にリアル。SF、群像劇、サスペンスを味わった後に著者が描いた希望は、この7 年で韓国が成し遂げた地点を示しているのかもしれない。(一)

戦後沖縄と復興の「異音」 米軍占領下 復興を求めた人々の生存と希望

謝花直美 著

  • 戦後沖縄と復興の「異音」 米軍占領下 復興を求めた人々の生存と希望
  • 謝花直美 著
  • 有志舎2600円
著者は沖縄戦や沖縄戦後史に取り組む沖縄タイムス記者、謝花直美さんである。戦後復興と言っても本土と沖縄とではまったく異なる。沖縄の復興は米軍が主導する占領政策で、その制度や価値観は生活のすみずみにまで浸透していった。  夫を戦争で失くした多くの女性たちの苦悩は並大抵ではなく、拠り所になった一つがミシンだった。奮闘して洋裁を覚え、自立していく女たちにはエネルギーや希望が感じられる。一方、子どもたちを抱えて困窮し売春を余儀なくされながら、ミシンがあれば生き直せるのにと願う女性の姿も。祈りにも似たつぶやきを、著者はていねいに取り上げている。 米軍によって開学された琉球大学では、米国民政府の権限に異議を唱えたり原爆展を開いた学生たちを「アカ」として退学処分にするなど、米軍支配による不当な復興の姿も見られた。真の復興とは…知られざる米軍占領下の異音に、今こそ耳をすませたい。(室)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
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 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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