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ふぇみんの書評

南島に輝く女王 三輪ヒデ 国のない女の一代記

倉沢愛子 著

    南島に輝く女王 三輪ヒデ 国のない女の一代記
  • 倉沢愛子 著
  • 岩波書店2500円
日本で、インドネシアで、オランダで、米国で、艶やかな笑顔をレンズに向ける、オランダ国籍の日本人女性。本書は、インドネシア史研究者が、ジャカルタの国立文書館で目にした一枚の書簡を機に、15年をかけ、主人公・三輪ヒデ(1902~86年)とその家族を追った渾身のルポである。  ヒデは函館に生まれ、白系ロシア人と恋に落ち、共にインドネシアに渡り、9人もの子どもらを育て上げた。「大東亜戦争」が勃発し、日本とインドネシア、オランダを巡る激動の歴史の中、時には夫をかばって銃口の前に身を曝し、家族を守るため日本軍に協力するなど手段を選ばず生きぬいた。デヴィ・スカルノとの知られざる交流も興味深い。世界のどこにいても、そしてどのような困難な状況にあろうとも、男性や歴史に左右されることなく、「私は私よ!」とばかりに自らの人生を切り拓くヒデの生き方は、人間として惹きつけられずにはいられない。一度お会いしてみたかった!(タ)

ハヨンガ ハーイ、おこづかいデートしない?

チョン・ミギョン 著 大島史子 訳

  • ハヨンガ ハーイ、おこづかいデートしない?
  • チョン・ミギョン 著 大島史子 訳
  • アジュマブックス1800円
「ラブピースクラブ」代表北原みのりさんが今年設立した出版社(アジュマは韓国語で中高年の意)から刊行された本書は、盗撮やレイプ動画、集団レイプへの招待や女性ヘイト発言のある掲示板を含む、韓国最大のアダルトサイト「ソラネット」に対し、闘いを挑み、2016年に閉鎖させたフェミニストたちのドキュメンタリー小説。  20代の広告会社のインターンのジスとファヨン、ジスの親友ヒジュンが遭遇する盗撮、リベンジポルノ、デートレイプ…しかし3人は立ち上がる。「死なないために私は選ぶんだ、猛烈な怒りの力を」。そしてネットフェミニスト集団メドゥーサ(実際はメガリア)で活動を始める-。  小説だから胸に迫る、女たちの怒りと絆、ミラーリングという手法の爆発力と閉鎖までの迫真の瞬間。「普通の」「韓国人男性」に浸透する女性嫌悪文化―。パパ活やAV強要など、韓国と問題が地続きの日本で、彼女らの怒りと成功の物語は私たちをどこまでも鼓舞してくれる。(肖)

「平成」の天皇と現代史

渡辺治 著

  • 「平成」の天皇と現代史
  • 渡辺治 著
  • 旬報社2200円
政治学者の著者が本書を著すきっかけとなったのは、2019年の天皇明仁の退位で抱いた疑問だ。1989年の昭和天皇死去・代替わりでは、礼賛や自粛ムードの中で天皇・天皇制への批判的言説も行われたが、それが今回は大きく減じたからだ。著者は「平成」30年間の天皇を取り巻く発言に緻密に当たり、天皇明仁が、憲法が求める天皇像から大きく逸脱する過程を検証する。そして、頻繁な外国訪問や東日本大震災などの被災地訪問の際に発する「おことば」による政治的影響力行使を目的とした公然たる発言が許される慣行が出来たことは、「平成」の天皇制が残した大きな負の遺産と書く。  いま私たちが果たすべき2つの責任を著者は記す。第1に、憲法に照らして象徴天皇制度を精査、天皇制の検証と制度改革を行うこと。第2に、戦争・沖縄・原発問題へ私たち自身がきちんと取り組み、天皇の「おことば」などに依拠せず、責任ある議論をすること。いま天皇制を検証する一冊である。(公)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4800円、1年9600円
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 郵便振替:00180-6-196455
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