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ふぇみんの書評

インターネットとヘイトスピーチ 法と言語の視点から

中川慎二、河村克俊、金尚均 編著

    インターネットとヘイトスピーチ 法と言語の視点から
  • 中川慎二、河村克俊、金尚均 編著
  • 明石書店2400円
右傾化する社会やネットにおけるヘイトスピーチの広がりは日本だけの問題ではない。とはいえ、日本は政治家や著名人が堂々とヘイト発言をする国で、コロナ禍では、他の国にはありえない医療者への差別も起きた。本書は、ネット空間のレイシズムの問題を国際人権法、ドイツ刑法などからとらえた論考集。言語学、倫理学など珍しい人文科学的見地からの考察は興味深かった。  京都朝鮮第一初級学校襲撃事件裁判、李信恵さんの反ヘイトスピーチ裁判、大阪・鶴橋のヘイトデモへの取り組みなど、すさまじいヘイトと闘った具体例も紹介。裁判勝訴や、各地の条例制定に、2016年成立の「ヘイトスピーチ解消法」は影響を与えた。が、罰則規定等がない法の効力は限定的だ。  「(ヘイトスピーチは)互いを尊重し合うことだけでなく自らを目的として尊重することも妨げる」という著者(河村)の言葉が印象に残る。本書が提起している哲学的考察も必要と感じた。(よ)

シモーヌVOL.4 特集 アニエス・ヴァルダ

シモーヌ編集部 編

  • シモーヌVOL.4 特集 アニエス・ヴァルダ
  • シモーヌ編集部 編
  • 現代書館1400円
2019年3月、映画監督アニエス・ヴァルダが亡くなった。1954年から晩年まで数多くの作品を撮り続け、18年のカンヌでは映画界の男女格差是正を訴える抗議声明を読んだ。ヴァルダの作品や生き様がもっと評価されていい、いや私たちの手で評価する!という意気込みと情熱溢れる一冊。  フェミ映画『歌う女・歌わない女』や『冬の旅』の「女」像…多様な論者のヴァルダ論は新たな視点を与えてくれ(小林美香による映画内写真の意味など)、ドキュメンタリーと劇映画、「私」と「公」の境界を軽々と飛び越えた、作品の先進性やユーモアを存分に伝えてくれる。  デザイナー・福岡南央子が指摘するように、ヴァルダは映画会社を立ち上げ自ら表現の場を作った。本書には映画会社アップリンクでのパワハラ被害者の会による映画業界実態調査も収録。日本映画業界の過重低賃金労働、セクハラ・パワハラ常態化の告発であり、ヴァルダの取り組みが一つの道しるべになりそうだ。(陳)

岸惠子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない

岸惠子 著

  • 岸惠子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない
  • 岸惠子 著
  • 岩波書店2000円
俳優にして国際ジャーナリストである著者。市川崑監督「女王蜂」の美しき家庭教師役は印象的であった。さて、副題はフランスの諺。人生の悲喜こもごもがテンポよく語られ思わず引き込まれてしまう。著者は渡仏後に結婚、離婚、一人娘と別れ帰国、と3度「卵」を割ってきた。卵を割ってしまうこと-家族との別れ-を経て、イスラエル人との友情などを機に、「オムレツ」にあたる未知の世界-イスラム世界やアフリカ大陸など-へ興味の赴くまま飛び込んでゆく。イスラエルで襲撃された危険な経験など意にも介さず、最近とある番組で「北イエメンに行きたい」と夢を語る姿は痛快だった。  自宅の庭に咲く、根を張るのが苦手で、乱雑に枝葉を広げるミモザに自身を重ねる著者は「まだやりたいことが山ほどある」という。制約多きこのご時世だが「卵を割らなければ、親子丼は食べられない」と勝手にアレンジした台詞を呟き、著者に倣い颯爽と日々生きてゆきたくなった。(タ)
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