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ふぇみんの書評

「暮し」のファシズム 戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた

大塚英志 著

    「暮し」のファシズム 戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた
  • 大塚英志 著
  • 筑摩書房1800円
戦争中の生活とはどんなだったのか。〈翼賛〉一色の政策の下、「新生活体制」の掛け声に背中を押され、〈生活〉〈日常〉〈自粛〉〈節約〉〈合理化〉〈科学〉のような言葉が新聞や雑誌に躍っていた。これらの言葉は戦争中こそ度々使われたという。  「ほしがりません…」などの多くの戦時標語を考案した花森安治、小説「女生徒」で若い女性のあるべき姿を示した太宰治、簡素で〈ていねい〉な生活を説く尾崎喜八、一番身近な家族や町内を描いて〈翼賛一家〉を登場させた長谷川町子などを引き合いに、著者は戦争が日常だった時代を細かに語る。耐乏生活の合理的追究が楽しく(今ならミニマリスト)、それが国策に沿ってしまうこと、主婦に新しい職域(銃後)を設けて、“やりがい”をつくる戦略。勇ましさを覆い隠すように、日常の中で新しさや正しさが推奨される時はご用心。  そういえば、今も「新しい生活様式」が言われている。既視感にクラクラする。(三)

エトセトラ VOL.5 私たちは韓国ドラマで強くなれる

小山内園子 すんみ 責任編集

  • エトセトラ VOL.5 私たちは韓国ドラマで強くなれる
  • 小山内園子 すんみ 責任編集
  • エトセトラブックス1300円
作家の温又柔さん、チョン・セランさんなど、日韓のさまざまな人のエッセイ、インタビュー、座談会を掲載。韓国ドラマに、フェミニズムの視点や歴史的背景から切り込む。言論弾圧の歴史と関連ドラマも紹介。数々の熱い語りにどれもワクワクした。  山下英愛さんの「韓国ドラマと韓国社会・女性史年表」が出色!で、「両性平等メディア賞」や「ドラマと女性たちの結びつき」のインタビューが興味深い。山下さんによると、1980年代の女性運動の一つに、メディアにおける性差別表現のモニター活動があり、さまざまな経緯の後、女性家族部(省)が、男女平等に貢献したテレビ番組に授与する「両性平等メディア賞」設立(99年)につながったようだ。この賞受賞のドラマも多い。年表を見ても、社会や女性たちの動きに連動してドラマが常に更新中と思える。女たちの運動や視聴者の批判から傑作が生まれ、傑作から元気をもらえる…。そんな韓国がうらやましい。私たちも!(く)

もう死んでいる十二人の女たちと

パク・ソルメ 著 斎藤真理子 訳

  • もう死んでいる十二人の女たちと
  • パク・ソルメ 著 斎藤真理子 訳
  • 白水社2000円
韓国の新たな女性作家による作品に出合える幸せ。本書は短編小説集で本邦初書籍化。1985年生まれの著者が、民主化運動弾圧事件の光州事件や福島第一原発事故、女性嫌悪殺人などに触発され繰り出す独創的で幻想的な作風は、不思議な浮遊感と空気感を感じさせながら、時折差し込まれる核心を突く言葉にドキリとさせられる。  女性への暴力の理不尽さを淡々と描く「そのとき俺が何て言ったか」、韓国の古里原発が大事故を起こした3年後が舞台の「冬のまなざし」、福島原発事故の放射能を避けるように体が小さくなった恋人と彷徨う女性の逃避行「私たちは毎日午後に」…。「じゃあ、何を歌うんだ」では、あるバーを舞台に、光州出身の若い女性(著者も)にとっての、「私の前には何枚ものカーテン」があるような光州事件との距離感を巧みに描いた。  訳者は、著者の文体に「容易に理解されることから身をかわすような文章の個性」があると。訳者の作品解説もまた秀逸。(KA) 
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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