WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

いないことにされる私たち 福島第一原発事故10年目の「言ってはいけない真実」

青木美希 著

    いないことにされる私たち 福島第一原発事故10年目の「言ってはいけない真実」
  • 青木美希 著
  • 朝日新聞出版1500円
朝日新聞で福島第一原発事故被害者を追い続ける著者の新著だ。  第1章は実態を反映しない避難者統計。2017年5月、大阪府は避難者数の実数793人を88人と発表。親戚・知人などを頼って避難した人や民間賃貸入居者は避難者から除かれた。郡山から大阪に避難した森松明希子さん親子も避難者から外れていた。福島県では避難者数をさらに切りつめる。森松さんは「避難者をゼロにしたら復興なのか。避難の権利を与えて欲しい」と訴える。  第2章で描かれるのはある家族だ。17年3月、住宅提供支援が打ち切られ、仕事のために避難先から南相馬に一人戻った父に届いたのは、中学3年生の息子の自死の知らせだった。「お父さんに会えなくて寂しい」。父は心身ともに病みつつ、「誰にも同じ目に遭ってほしくない」と語る。  この理不尽は伝えなければ、なかったことにされてしまう。著者はこれからも取材し、伝え続ける。原発事故は終わっていない。(ね)

偶然の家族

落合恵子 著

  • 偶然の家族
  • 落合恵子 著
  • 東京新聞1400円
読み終えた後、前よりも楽に息ができている気がした。東京にある洋館の下宿「榠?(かりん)荘」の7人の住人の、血縁や「家族」の呪縛を超えた、緩やかで温かな関係を描く小説。1990年に刊行され、復刊。冒頭に元住人による2021年現況の語りを挿入することで、現在とつなげた。  ゲイのカップル、「家」意識に縛られた婚家を出たシングルマザーと子、女性の本屋を開きたいシングル女性、離婚したシングル男性、家族の束縛から逃れた男子学生…それぞれが何らかの傷を持ちながら、傷ゆえに「やさしく勁(つよ)くなった」人たちが、距離感を思いやりつつ大家族のように暮らす。共にする食事と語らいの豊かさ、庭の草木がもたらす安らぎとつながりがよい。子どもの尊厳を大事にしながら愛する大人たちも、いい。  復刊は、30年前本作が大好きだった女性記者が退職前に尽力した。そのシスターフッドもまたいい。30年後も家族の状況が変わらないのは悲しいが…。(LW)

自立生活 楽し!! 知的障害があっても地域で生きる 親・介助者・支援者の立場から

P・カーン=カラーズ、A・バンデリ 著 ワゴナー理恵子 訳

  • 自立生活 楽し!! 知的障害があっても地域で生きる 親・介助者・支援者の立場から
  • 佐々木和子 廣川淳平 編著
  • 解放出版社1400円
この本は、知的障害のある佐々木元治さんが、地域で一人暮らしをする記録です。でも、単に個人の記録ではなく、障害のある人が一人暮らしをするときのガイドブックにもなっています。元治さんが、いろいろな人の支援を受けつつ「行動援護」や「重度訪問介護」などの制度を使って工夫しながら、一人の生活を編んでいく様子がよくわかります。お茶目な元治さんの愉快な自立生活の日々、手出しを最小限にして自立を見守る母・和子さんの思い、そして元治さんの自立生活を支えるヘルパーさんたちの自然体の関わりなど、とても大切な内容がたっぷりと詰まっています。  廣川さんほかヘルパーさんたちが、最初は不器用ながらもだんだん肩の力を抜き、元治さんといっしょに考え、悩み、成長し、楽しみながら暮らしを作っていく姿がうかがえ、地域で当たり前に暮らすことの大切さがしみじみと伝わります。(J)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ