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ふぇみんの書評

「テレビは見ない」というけれど エンタメコンテンツをフェミニズム・ジェンダーから読む

青弓社編集部 編著

    「テレビは見ない」というけれど エンタメコンテンツをフェミニズム・ジェンダーから読む
  • 青弓社編集部 編著
  • 青弓社1800円
テレビをはじめとするエンタメコンテンツが大好きだ。それでももちろん、エンタメ業界の差別的な表現や相変わらずのばかばかしさには正直うんざりもしている。  そんな私にうってつけ、「テレビのコンテンツのうちバラエティーとドラマに光を当ててフェミニズムやジェンダーの視点から多角的に論じる」という本書。  現在お笑いの世界では、すでに新しい笑いの表現が模索されており、特に女性芸人たちがホモソーシャルなお笑い界に異を唱え、ポジティブなメッセージを発信するようになったことは、特筆に値する。ドラマの世界でも、性別役割分業や男性同士の恋愛をテーマにした作品に新しい流れが見える。  とはいえ、エンタメの世界には、まだまだ差別的表現が蔓延し、課題もてんこ盛りだ。最終章の手厳しい鈴木みのりの論考には、だれもが自身を顧みるに違いない。(J)

別の人

カン・ファギル 著 小山内園子 訳

  • 別の人
  • カン・ファギル 著 小山内園子 訳
  • エトセトラブックス2200円
著者は1986年生まれの韓国の「ヤングフェミニスト作家」の一人。2017年発表の本小説は同年のハンギョレ文学賞を受賞した。  物語は、ジナがデートDVの事実をネットで告発し、凄まじい誹謗中傷を受けるところから始まる。被害者が抱える自責感、些末な事実をあげつらい「被害者ではない」と中傷する“世間”の存在は、日韓共通のよう。ある投稿に触発されたジナは、大学途中まで過ごした地方都市アンジンに戻るが、そこで出合った真実とは―。  女性登場人物たちが、日韓の刑法で罪にならない“同意なき”性暴力後の膨大な時間を生きる。レイプなのに“レイプ”にならない怒り。ある人は“別の人”になり、ある人は“別の人”を目指した。しかし強固な「女性嫌悪社会」の中では、階級差別や地方差別も絡み、女の連帯もままならない。その複雑さも描く。でも女性たちは絡んだ糸を解きほぐし、動く。「ここからはあんたの番だよ」の声かけを、抱くようにして受けとりたい。(KU)

ブラック・ライヴズ・マター回想録 テロリストと呼ばれて

P・カーン=カラーズ、A・バンデリ 著 ワゴナー理恵子 訳

  • ブラック・ライヴズ・マター回想録 テロリストと呼ばれて
  • P・カーン=カラーズ、A・バンデリ 著 ワゴナー理恵子 訳
  • 青土社2600円
この本はその回想録とあるが、ほとんどは彼女の生い立ちにおける黒人の状況を述べたものである。特に兄のモンティの人生は壮絶だ。14歳で飲酒などの微罪で鑑別所に送致以降、施設と刑務所を出たり入ったり。拘束と暴力と拷問により彼の精神はズタズタになった。一度警察に捕まると後の人生は監視からは逃れられない。これはアメリカの黒人の現実だ。常にヘリコプターが頭上を旋回し、巡回する警察官は子どもでさえ押さえ付け所持品の検査をする。挙句の果てに警官による殺人は後を絶たない。パトリースがBLMを叫ぶ理由がそこにある。しかし、活動をすることはテロリストとして監視対象になることだ。単なる人権活動がテロとなり当局の取り締まり対象になる。女性活動家アンジェラ・デイヴィスは本書の序文に「私たちは人間だ。私たちは生き延びる」のだと言葉を寄せている。(ぶ)
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