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ふぇみんの書評

福島が沈黙した日 原発事故と甲状腺被ばく

榊原崇仁 著

    福島が沈黙した日 原発事故と甲状腺被ばく
  • 榊原崇仁 著
  • 集英社900円
著者は東京新聞の記者。チェルノブイリ事故では甲状腺がんが多発したが、福島原発事故ではどうなのかという問題意識から調査を始めた。情報公開請求で集めた2万枚以上の文書と、関係者への取材から浮かび上がった事実が詳細に記される。  福島県が福島原発事故前に作った甲状腺被ばく測定のマニュアルに沿った測定は実施されず、数としても30㌔圏外の1080人を測っただけで終えた。本来、網羅的に行われるべき甲状腺被ばく測定はないがしろにされ、被ばくの基準となる数値が大幅に引き上げられ歪められて、記録も残されないまま、「健康には影響がない」と結論付けられたのだ。  甲状腺被ばく測定は、記録を残し将来の医療措置や損害補償の際に根拠とするものだが、その意味は失われてしまった。  被ばくの記録があれば、政府や東電の加害責任を問える。県は、被害者の代表の役目を担っていたはずではなかったか。被害者を沈黙させてはならない。(ね)

キングコング・セオリー

ヴィルジニー・デパント 著 相川千尋 訳

  • キングコング・セオリー
  • ヴィルジニー・デパント 著 相川千尋 訳
  • 柏書房1700円
率直で、乱暴で、挑発的。ノックアウトされた後に、著者の言葉が心にしみいる―。仏の作家の著者が、17歳の時のレイプ被害や個人売春の経験をもとに、性暴力や売春、ポルノ、「女らしさ」の正体などについて記したフェミニズムエッセイ。2006年に刊行、#MeToo運動後に若い世代中心に再評価を受けているという。  著者は宣言する。「私はブスの側から書いている。…『いい女』市場から排除されたすべての女たちのために」、そして“男らしくない男”のために。男権社会の中でレイプに際してすら発動する「女らしさ」の呪縛と女同士の監視装置、高みから「売春女性は被害者」と言い放つ思考や、自らの性欲に向き合わないポルノ批判の欺瞞を暴く。  著者の過去作(映画『ベーゼ・モア』も)から一貫するのは、男性中心社会への強い憤りと、その表現と反撃に“お行儀よくしてられるか!”という怒り。そのパンチ力は私の中の「女らしさ」呪縛に気付かせ、解き放つ。(KU)

無意識のバイアス 人はなぜ人種差別をするのか

ジェニファー・エバーハート 著 山岡希美 訳

  • 無意識のバイアス 人はなぜ人種差別をするのか
  • ジェニファー・エバーハート 著 山岡希美 訳
  • 明石書店2600円
「あの男の人、飛行機を襲わないといいね」。5歳の息子の言葉に黒人女性の社会心理学者である著者は憤り深く傷ついた。バイアスから自由でいられる者は誰一人として存在しない。だがそれは人間が大量の情報を処理するためになくてはならないものでもある。私たちは見て判断するのではなく、判断して見ているのだ。  その「自然」な傾向と向き合いながら、主に人種の観点から、米国社会における犯罪と警察、地域社会、教育現場、著者を含む身近な人々を描くことを通じて、時に打ちひしがれながら、著者は人間がお互いをはっきりと認識することに近づこうとする。  社会にバイアスの対象となる集団が存在することはその集団の社会的適応を妨げ、帰属意識を低くしてしまう。それは公正な社会を遠ざけ、分断を広げる。本書は米国の人種問題だけの本ではない。日本社会に存在する様々なバイアスについても、ゆがめられた心を開いて注意を払うよう促してくれる。(優)
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