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ふぇみんの書評

日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション

デラルド・ウィン・スー 著 マイクロアグレッション研究会 訳

    日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション
  • デラルド・ウィン・スー 著 マイクロアグレッション研究会 訳
  • 明石書店3500円
「マイクロアグレッション」は「何気ない差別」とも言うべき概念。根強い差別が充満するこの社会にあって、「あからさまな差別」よりも実はもっと根深い、一人一人の意識の深層に宿る差別概念だ。多くの人は自分を差別者だと思わない。受けた当事者も「気のせい?」と判断に悩む。無自覚な差別は受ける側も、加害者もともに損なう。本書は、「人種、ジェンダー、性的指向」に関わる多くの具体例からマイクロアグレッションを3形態に分類し読み解く。オフィスにあるヌード写真のように意識的行為であるマイクロアサルト。「かすかな無視」のように無自覚だが無神経なマイクロインサルト。LGBTQ等集団の感情等を無価値化するマイクロインバリデーション。それらが日常的で微細なコミュニケーションの中から立ち現れ、大きな社会的な差別構造の基層をなす。  各章の最後には、議論し、考え進むための「次の一歩」が示される。まず「気づく」ことだ。(の)

わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い

レベッカ・ソルニット 著 ハーン小路恭子 訳

  • わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い
  • レベッカ・ソルニット 著 ハーン小路恭子 訳
  • 左右社2200円
本書は多彩なジャンルで活躍する著者の、ジャーナリスティックな視点と文学的視座が交差した深い思考が冴えわたるフェミニズム・エッセイ集だ。本書のタイトルの問いへの応答として、家父長制が強いるさまざまな沈黙が語られる。ベル・フックスの言葉を引き、家父長制はまず男性が自分自身を沈黙させることから始まるという。そして権力との引き換えに感情を放棄していくという。  ジェンダー規範を内面化させていくことは、生まれたばかりの赤ちゃんの時から既に始まっているという。その過程で多くの女性たちは礼儀正しさや恥を内面化し、沈黙させられていく。レイプ、虐待、DV、ハラスメント、さまざまなシチュエーションの中で、なぜ彼女たちは沈黙を強いられていくのかと分析を試みながら、その沈黙を破っていった先達のフェミニストたちの言葉に触れ、いま私たちは一進一退ではあるがその沈黙を破り、社会が大きく変わりつつある歴史の中にいるのだと、希望を与えてくれる。(え)

虚構の新冷戦 日米軍事一体化と敵基地攻撃論

東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター 編

  • 虚構の新冷戦 日米軍事一体化と敵基地攻撃論
  • 東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター 編
  • 芙蓉書房出版2500円
中国の政治的・軍事的脅威が叫ばれるいまは、米中対立の「新冷戦」なのか。本書は、「敵基地攻撃論」の危険性、軍事対立をあおる米国の「新冷戦」プロバガンダの虚構性をあばき、沖縄・日本が「戦争に巻き込まれる」危機から打開の方向性を見出すために刊行された。  米国の意を受けて敵基地攻撃能力の保有に突き進む日本での、拡大するミサイル防衛、在日米軍基地の現状や南西諸島の軍事強化、宇宙・サイバー空間の軍事化などを、専門家、ジャーナリスト、市民活動家らが多面的に詳説、また中国の軍事・外交戦略についての分析も含まれる。  敵基地攻撃論に対し、「護憲理念に立つ専守防衛」を護憲の側が具体的に提示すべきと前田哲男さんはいう。琉球新報の新垣毅さんは、日本には、米国の防波堤としてではなく、米中の「懸け橋」となって紛争や戦争の可能性を小さくする役割こそが求められていると主張する。戦争の危機を回避するために何が必要か。本書を読み込みたい。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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