WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

ルポ「命の選別」 誰が弱者を切り捨てるのか?

千葉紀和、上東麻子 著

    ルポ「命の選別」 誰が弱者を切り捨てるのか?
  • 千葉紀和、上東麻子 著
  • 文藝春秋1700円
日本の「優生社会化」が止まらない。本書は毎日新聞報道を元に、記者らがあらゆる現場で現在進行する事実を追求し、積み上げ、「優生の正体」に肉薄した。  妊婦相手の「不安ビジネス」と化した新型出生前診断や対象拡大一途の着床前診断。近年はゲノム編集による受精卵の遺伝子改変や、全染色体や遺伝情報を明らかにする「着床前スクリーニング」の技術進歩が著しい。難病患者と家族の希望もあるが、「人類の品種改良」の可能性も。しかも日本にはゲノム編集や遺伝情報の法規制がないのに、技術進化とビジネス化、命の選別が加速。そして障害がある新生児は養育放棄され、住民は障害者施設建設に反対し、大規模収容施設の虐待は日常化―。  出生前診断対象難病の少女は生命力に溢れ、施設建設に反対していた住民は「障害者を知らなかった」と。技術進化に間に合うよう、私たちは、知り、共に生きる知恵を至急見いださねば。大きな課題を突きつけられた。(SW)

バナナ・ビーチ・軍事基地 国際政治をジェンダーで読み解く

シンシア・エンロー 著 望戸愛果 訳

  • バナナ・ビーチ・軍事基地 国際政治をジェンダーで読み解く
  • シンシア・エンロー 著 望戸愛果 訳
  • 人文書院5800円
多くのフェミニストたちさえ男性の領域と信じていた国際政治に「女性はどこにいるのか?」という問いを携えて分け入り、人びとを驚かせた本書が出たのは30年も前。待ちに待たれた日本語版、それも、著者のこの間の幅広い研究が反映されて倍に膨れ上がった改訂版の出版である。  外交官の妻、客室乗務員、セックスワーカー、子守り。誰も注目してこなかった女性たちに焦点をあわせることによって、何が国際的であり何が政治なのかについての理解がみるみる塗り替えられていく、その驚きはなお新しい。夕飯に何を食べ、どこに旅行に出かけるか、私たちの日常は国際的な権力関係に満たされているのだ。同時に本書は、私たちが複雑な権力の網の目に囚われていながら、抵抗する力をもつ政治的アクターのひとりであることを思い出させてくれる。古典にして最先端、わくわくする探検の扉であり、緻密で深い洞察に誘う比類なきこの本に出会う喜びを体験してほしい。(も)

レイシズムとは何か

梁英聖 著

  • レイシズムとは何か
  • 梁英聖 著
  • 筑摩書房940円
 本書はレイシズムを「人種化して殺す(死なせる)権力」と定義し、不平等な資本主義経済を再生産する上でレイシズムはみごとに役割を果たしていると分析する。  さらに、ヘイトスピーチなど日本の特殊で深刻な差別の問題を提起。日本では過去の植民地政策や戦後の外国人政策から続く、政治による差別扇動が強力に作用し、草の根の極右を登場させ、ヘイト本などの差別の産業化が起きた。また日本型反差別の特徴として、社会正義としての反差別の規範がないことを挙げる。差別する?自由”を守りつつ被害者に寄り添うことは、差別の抑止にならないばかりか、被害者を沈黙させ、差別の解釈権はマジョリティーが握ってしまう、との指摘はとても重要だ。  BLM運動は植民地・資本主義批判やレイシズムとセクシズムとの関係などさまざまな批判を込めた革新的運動だという。日本はまず差別禁止法が必要だろう。差別行為の発展メカニズムを丁寧に分析した本書は極めて貴重だ。(ん)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ