WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

東電原発事故 10年で明らかになったこと

添田孝史 著

    東電原発事故 10年で明らかになったこと
  • 添田孝史 著
  • 平凡社840円
著者は東電福島原発事故の国会事故調査委員会で、協力調査員として津波分野の調査を担当した科学ジャーナリスト。現地を取材し、原発関連裁判の傍聴を続け、事故調査報告書や裁判記録など膨大な資料を集めて事故原因を徹底的に追究し、被爆の実態、裁判の現状なども詳らかにした。  事故前の東電や国の動きを年次ごとに追う。危険性が指摘されたにもかかわらず先送りにされた津波対策、杜撰な避難計画、事故後の情報隠し…。隠蔽され最近わかった事実もある。事故前から東電などがどう動き、何をしなかったのかを順次追うことで、事故の全体像が見えてくる。無責任な東電、東電に迎合する原子力安全保安院や御用学者、原子力ムラに群がる人々、核燃料サイクルに拘泥する国…。「原発は安全だ」と嘘をつき、住民の命や生活を軽視した者たちが事故を起こし、責任逃れを続ける。読むほどに怒りがこみ上げる。この国は原発をもちたがるが、その資格さえないとわかる。(く)

テレビは原発事故をどう報道したか 福島第1原発事故後10年

小田桐誠 著

  • テレビは原発事故をどう報道したか 福島第1原発事故後10年 3・11の初動から「孤立・分断・差別」そして「復興」フェイクまで
  • 小田桐誠 著
  • 秀和システム2200円
メディア批評を専門とするジャーナリストが、3月11日の原発事故発生から、キー局と福島の地元テレビ局による原発事故の報道番組を検証した。原発立地については過去の番組も視聴し、科学的知見を得るために集会参加や関係者取材も繰り返した労作だ。  冒頭、緊迫した事故発生時や水素爆発などの報道部分に、当時の恐怖がよみがえる。東電の事故対応、放射能汚染、住民の避難、除染、自治体の取り組み、被害者・避難者の苦悩、「復興」等を、どのように報道するか、各局を比較・検証する。地道に報道を続ける地元局だが、東電の主張のたれ流しの一面も。次第に3月だけの報道が増えるキー局。単発ニュースが増えることで問題の脈絡がつかみにくくなる上に、実は大事なことが隠されているのでは、と著者は指摘する。  メディアは誰に向けて報道するべきなのか。改めて、視聴者のメディアリテラシーも考えた。(三)

白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺

三浦英之 著

  • 白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺
  • 三浦英之 著
  • 集英社1800円
 新聞記者の著者は、2017年秋に福島県内に着任、19年5月に南相馬支局へ移り、頻繁に帰還困難区域(白い土地)と周辺に通う。  午前2時から4時間かけて、浪江町内全域に85部の新聞をたった1人で配る青年。「(彼の配る)新聞は温かい。彼の姿を思い浮かべながら毎朝、新聞を読む」と語る人。日本新聞協会の授賞式で東京に来た青年は「東京ってどんだけ明るいんですかね…」とつぶやく。  馬場有・浪江町長の、死の直前の口述筆記に3章を当てる。東電はもとより国や県からの情報もなく、高濃度に汚染された津島地区に8000人が避難してしまう。「対応にあたった民主党政権だけではなく、自民党政権も、彼らは常に『東京』を見ていた」と馬場。国には頼れない、自分たちの手でやるしかない。町職員全員で町は動き出す。  津波で行方不明の娘を探し続ける父親、相馬農業高校馬術部など、著者は出会う人々にまっすぐに向き合う。心揺さぶられるルポルタージュだ。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ