ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論
デヴィッド・グレーバー 著 酒井隆史ほか 訳
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ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論
- デヴィッド・グレーバー 著 酒井隆史ほか 訳/li>
- 岩波書店3700円
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著者は本来不必要で有害な有償雇用状態を「ブルシット・ジョブ」と名付け、さまざまな職種の人々の証言と共にブルシット・ジョブを分析する。
機械やAIの導入で減るはずだった労働だが、実のところ規制が増え無駄なデスクワークをする管理部門が増えている。生産性のあるなしを評価される労働観は ?神学的”だと著者は主張する。真に有用なケアワーク、エッセンシャルワークが無報酬・低賃金となっていることはもちろん問題だが、ここで論じられているのは、自他共に無駄と思える仕事をする人々が精神を病んでいることだ。その解決方法は、ケアを軸に労働を規定することや、ベーシックインカムだと考察する。
昨年9月に急逝した文化人類学者で活動家でもあった著者。労働環境が嫌悪と疑念で形成されている悲惨な状況を終わらせたいと記している。コロナ危機において、私たちがさらに分断されないためのヒントになるだろう。(み)
エトセトラVOL.4 女性運動とバックラッシュ
石川優実 責任編集
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- エトセトラVOL.4 女性運動とバックラッシュ
- 石川優実 責任編集
- エトセトラブックス1300円
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フェミマガジン「エトセトラ」第4号は、#KuToo運動で職場等でのパンプス強要廃止の流れを作った、石川優実(本紙2019年11月25日号1面)が担当。今もSNSなどで苛烈なバッシングを受ける石川が、日本の女性運動を知り、「バックラッシュ」とは何かに迫る。
バックラッシュは女を孤立させる。ウーマンリブの米津知子、「行動する女たちの会」の山田満枝・高木澄子らへのインタビュー、伊藤詩織との対談など、読み進めるほどに読者も石川も、シスターフッドを確認し、声を上げるエネルギーと生きる喜びに溢れる。被災地の性暴力を告発した正井禮子がフラワーデモに勇気づけられる場面も。2000年代に吹き荒れたバックラッシュ対応の検証ができていないこと、当時の対応が今のトランス女性差別を生み出したとの指摘が非常に重くのしかかる。かつてと今の女たちをつなぎ、女の歩みの中に自分を見出すバイブルのような本。声を上げ行動することは「めちゃくちゃ楽しい」!(YU)
ヤングケアラー わたしの語り 子どもや若者が経験した家族のケア・介護
澁谷智子 編
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- ヤングケアラー わたしの語り 子どもや若者が経験した家族のケア・介護
- 澁谷智子 編
- 生活書院1500円
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ヤングケアラーとは、ケアが必要な家族の世話をする17歳未満の人たちを指す。本書はヤングケアラーの経験者7人が、自身の体験を振り返り、綴っている。
彼・彼女らは難病や精神疾患を抱えた母親、認知症の祖母、ろう者の両親、重度心身障害児者の妹などの世話を担ってきた。学業との両立など多くの苦労があると知った。ショックなのは皆が周囲に話せなかったということ。ヤングケアラーの存在、実情を知らず、かわいそうと同情するだけの人が多い社会では、ヤングケアラーは相談しづらいだろう。
彼・彼女たちがもっと自由に時間や将来の設計が立てられるよう、支援は急務だ。当事者同士が悩みを話せる場も必要だ。執筆者たちが苦労をばねにたくましく生き、体験を生かして自身の人生を豊かにさせていることに感動するとともに、社会に何が足りないか、いろいろ教えられた。(う)