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ふぇみんの書評

性暴力被害を聴く 「慰安婦」から現代の性搾取へ

金富子、小野沢あかね 編

    性暴力被害を聴く 「慰安婦」から現代の性搾取へ
  • 金富子、小野沢あかね 編
  • 岩波書店2400円
  30年間にわたる日本軍「慰安婦」問題解決行動の中で、多くの被害者の証言がなされた。本書は、これらの証言がどのように聴かれてきたか検証することで、現代の性暴力被害を「聴く」姿勢を鍛える一助とするために書かれた。  韓国では事実解明を目的とした聞き取りから始まり、「問うから聴くへ」という、主導権を被害者に委ねる「証言者中心主義」へ転換が図られた。日本でも、在日朝鮮人「慰安婦」被害者の証言聴き取りにその姿勢が貫かれている。  「性暴力被害が語り出されるためには、被害者の味方になり、敬意を持ってその声を聴く人々の存在が不可欠」であることを、多彩な執筆者が明らかにする。編者の金富子は、「聴き手」の聴きたい証言をだけを聴くという「モデル被害者論」を批判し、日本社会で朝鮮人「慰安婦」理解のために、植民地主義克服の必要性を論じる。  性暴力を被害と認識するのでさえ7年半かかるという。「聴くこと」の重要性が増している。(晶)

少女たちがみつめた長崎

渡辺考 著

  • 少女たちがみつめた長崎
  • 渡辺考 著
  • 書肆侃侃房1600円
本書ではNHKで戦争番組を制作してきたディレクターと長崎の高校生らの出会い、さらに彼、彼女らが「女性と原爆」について取材を進める姿を追ってゆく。  被爆女性らの多くは原爆症の影響を恐れ周囲から結婚、出産を反対されており、中には今も差別を恐れ被爆体験を実子に隠す女性もいるという。被爆女性を通し生徒らは、理解が足りないことから差別は起きる、だからこそ学び、被爆体験がないことを恐れず発信する重要性に気付いてゆく。  自身も被爆し、原爆を描いた作品を残した作家の故・林京子の逸話も興味深い。彼女は「(原爆についての)私の本を読んでくれる人は(原爆を)理解しているのだ、問題は、読んでいない人にどう伝えるかなんだ」と語ったという。  反戦、反原発、反差別…そうしたテーマに限らず、無関心、無理解な人々へどのように対話を呼びかけ、考えを共有してゆくのか? そのヒントを、本書に登場する若者らは教えてくれる。(タ)

わたしの青春、台湾

傅楡 著 関根謙、吉川龍生 訳

  • わたしの青春、台湾
  • 傅楡 著 関根謙、吉川龍生 訳
  • 五月書房新社1800円
 2014年に台湾で起きた社会運動「ひまわり運動」のリーダーなどを描いたドキュメンタリー映画『私たちの青春、台湾』。その監督が人生や映画について語っている。父はマレーシア華僑、母はインドネシア華僑という家族のことや、学校で仲間外れにされた経験、ドキュメンタリー製作を目指した過程などを赤裸々に振り返る。   映画は現在全国順次公開中のため、詳細は避けるが、映画でも本書でも、監督自身と他者の挫折や葛藤、過ち、そして若者の成長を誠実に話していることに感動し、共感する。監督の真摯なスピーチが政治的だと批判されることもあり、台湾、香港、中国の複雑な事 情と解決の困難さを痛切に感じる。それに日本が無関係でないことも…。  本書・映画から学んだのは、自分にも他者にも過度の期待をしないこと。社会運動を続けるには信念と他者との平等な対話が重要なこと。記録すること。社会を動かすのは一人一人の内から湧く力の集まりだと改めて思う。(ん)
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