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ふぇみんの書評

屍の街 大田洋子 原爆作品集

大田洋子 著 長谷川啓 編

    屍の街 大田洋子 原爆作品集
  • 大田洋子 著 長谷川啓 編
  • 小鳥遊書房3500円
 広島で被爆し1963年に亡くなるまで、原爆症発病の恐怖と闘いながら当事者として原爆の惨状をテーマに作品を書き紡いだ著者。本書は代表作「屍の街」他、未収録作も含めたアンソロジーだ。  乾いた文体である。全身や顔のケロイド、刺青のような痣、血糊の着いた衣服や手ぬぐい、死臭のする川の匂い、家族離散後の別の男との暮らし、河原の小屋、ナメクジ…、一変した生活が淡々とした筆致で書かれ、受け入れざるを得ない現実の悲惨な様子を浮かび上がらせる。「原子爆弾を投下した地域は今後75年間、人類や生物の生棲は不可能」(屍の街)と言われた街。希望は見えないが、その現実に自分の意思を持って発する女たちの言葉と振る舞いに救われた。  1945年11月脱稿した「屍の街」の完全な形での出版は、占領下の1950年5月。「書いておくことの責任を果たしてから、死にたいと思った」と「序」に記す。被爆、そして敗戦から75年の今、読まれるべき本である。(の)

国道3号線 抵抗の民衆史

森元斎 著

  • 国道3号線 抵抗の民衆史
  • 森元斎 著
  • 共和国2500円
医師として水俣に寄り添い続けた原田正純が、「植民地を失った日本の資本は、九州を植民地代わりに高度経済成長を支え」、「戦後の負の遺産は九州に集中した」と書いた。今は長崎に住む著者は、国道3号線を北上する形で、鹿児島、水俣、福岡の炭鉱、北九州で、歴史と思想を掘り下げ、未来を見通そうとした。  テーマの一つはコミューンだろう。直接民主主義をめざす山鹿コミューンと西南戦争。福岡県筑豊の炭鉱住宅に森﨑和江や上野英信夫妻とともに住み、「サークル村」を立ち上げ、「原点が存在する」と書いた谷川雁の思想と変遷。水俣では、「悶え加勢する」石牟礼道子を描き、1918年に起きた福岡・門司での米騒動にも1章をさく。  各章の「寄り道」も読ませる。中国革命にかかわりを持った宮崎八郎、「私はチッソであった」と表明する緒方正人、九州の教育闘争だった伝習館裁判、若松半島から朝鮮にも目を向ける。画家・田中千智による表紙絵も美しい。(き)

仮面 虚飾の女帝・小池百合子

横田一 著

  • 仮面 虚飾の女帝・小池百合子
  • 横田一 著
  • 扶桑社1300円
本書の著者は、2017年9月の会見で小池百合子から「排除いたします」発言を引き出したフリージャーナリスト。安倍一強に対抗しうる“改革派知事”と期待して取材をするうちに、仮面の下が見えてきたと書く。都知事1期目の選挙公約“7つのゼロ”は全く実現せず、取り組んだ五輪関係予算の検証と築地市場移転問題はどちらも成果がなかった。都知事再選の当確直後、池上彰が「4年の任期をまっとうするか」と聞いたら、小池は言葉を濁して答えなかった。著者は、見た目を繕った「小池知事の『仮面』の下には何の政治信念も理想も」なく、そこにあるのは初の女性総理を目指す「強烈な上昇志向・権力欲だけ」と断言する。  希望の党が総選挙で惨敗すると鳴りを潜めていた小池だが、今年のコロナ禍で再び動き出したと著者は見る。関東大震災での朝鮮人虐殺犠牲者への追悼文を初めて中止した都知事が何をしてきたか、健忘症の私たちは本書で再確認しておくべきだ。(公)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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