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ふぇみんの書評

またね。木内みどりの「発熱中!」

木内みどり 著

    またね。木内みどりの「発熱中!」
  • 木内みどり 著
  • 岩波書店1800円
 著者は、政治的発言を嫌う芸能界で女優を続けながら臆することなく脱原発集会で司会をし、脱原発を公約に掲げる候補者の選挙を応援するなど活発に活動してきた。表紙の写真のようなはつらつとした姿が記憶に残るが、昨年11月、69歳で急逝した。  本書は、福島第一原発事故をきっかけに、「自分にも(原発事故の)責任がある」「自分にできることは全部やる」と決意し、本気で社会を変えるため活動してきた著者の“生”の記録であり、ウェブサイト「マガジン9」の連載コラム「木内みどりの『発熱中!』」を編集した「遺稿集」でもある。  原発事故後の帰還困難区域訪問記、パレスチナやミャンマーの現地の人との交流、大切な友人たちの話等、著者の柔らかな感性と学習欲と“熱”に満ち、多彩な内容が盛りだくさん。硬直しがちな運動の中で、いかに多くの人に伝えられるのかと、常に「自分らしく、自由に、そして否常識」に行動していた著者に、本書で再会できる。(晶)

「母と息子」の日本論

品田知美 著

  • 「母と息子」の日本論
  • 品田知美 著
  • 亜紀書房1700円
公私の分野で遅々として男女平等が進まない日本。根本原因は何かを探求する著者が行き着いたのは、「男の子はいつまでも手がかかって幼いから、可愛い」に象徴される、「母と息子の甘美で重苦しい関係」。この「母と息子」を軸に、日本のさまざまな現象(“羽生結弦”や引きこもり)や事件と現状を読み解く画期的な書だ。  重苦しい母を「娘」らは、「毒母」告発をして逃れた。残されたのは「息子」の世話を通して甘やかな支配を手放さない母の、自己犠牲を伴う「愛」。だがそれは、「稼げる息子」にするためだと著者は看破。そして個として自立できない「息子」が支配する日本の政治は「情念」や「お友達」論理がまかり通り、母から逃れようと「女性恐怖」を抱く―。  フェミニズムの言葉で表現しきれなかった「空気」が名指しされ、目を開かれ納得しきり。解決法はあらゆる場で女が不必要に“母”役割をしない、自分を生きること。今からでもできる!(冬)

五輪と万博  開発の夢、翻弄の歴史

畑中章宏 著

  • 五輪と万博  開発の夢、翻弄の歴史
  • 畑中章宏 著
  • 春秋社1900円
著者の畑中章宏さんは民俗学者で、独自の視点で「五輪と万博」を論じた。そこに華々しい祭典への栄光や輝きはない。あるのは土地を背景とした蠢く人間である。作家・小林信彦が、東京の高度成長を関東大震災や大空襲と並べ同じ破壊としてとらえ、建設とは大きな錯覚に過ぎないと述べていることを挙げ、著者は「五輪も万博も開発と翻弄の歴史であり、そのうえで刻まれていく記憶は痛切なものであるに違いない」と結んでいる。そこに自然破壊への人間の驕りを諫める著者の視点がある。  権力と大企業によって消されていく景色に、将来への危惧を憂い、新宿へ移転した都庁のことに触れ、移転先となった1964年の牧歌的な淀橋浄水場の写真を掲げる。土地と人が織りなす歴史の変遷の中で、巨大イベントは一瞬の閃光のように光り、時代は流れ、人は忘れ、土地はまた違う景色を織りなしていく。本書から感じるのは、失われた日本の原風景への憧憬である。(ぶ)
【 新聞代 】(送料込み)
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