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ふぇみんの書評

母たちと息子たち アイルランドの光と影を生きる

コルム・トビーン 著 伊藤範子 訳

    母たちと息子たち アイルランドの光と影を生きる
  • コルム・トビーン 著 伊藤範子 訳
  • 行路社2400円
本書は『ノーラ・ウェブスター』などで知られるアイルランドの作家コルム・トビーンの、母と息子に焦点をあてた9つの物語からなる作品集。原書は2007年に刊行されている。当時アイルランドはEU議長国となり(04年)大きな経済発展を遂げる。根強く残るカトリシズムと家父長制の影から脱却しようとする新しい波が、ダブリンやエニスコーシーの町、家族や友人たちの生活や会話の細やかな描写のなかから見えてくる。  さまざまな状況の下で展開する物語の主人公たちは、社会の抑圧に対して脆弱な身でありながら、時に逞しく時にしなやかに生きていく。「肝心かなめ」と題された物語の主人公は、亡き夫が残した借金と小さなスーパーそして3人の子どもを抱え、“寡婦がビジネスをはじめるのはいかがなものか”と見下されながらも、新しい商機に挑み保守的な町に分け入っていく。母と息子、そこに行き交う人々の間に横たわる繊細な距離感が、ほろ苦くも清々しい。(え)

それはデートでもトキメキでもセックスでもない

ロビン・ワーショウ 著、山本真麻 訳

  • それはデートでもトキメキでもセックスでもない 「ないこと」にされてきた「顔見知りによる強姦」の実態
  • ロビン・ワーショウ 著、山本真麻 訳
  • イースト・プレス2000円
女性の4人に1人がレイプまたは未遂被害者で、84%が加害者と知り合いだった―この衝撃的数値は、米のフェミニズム雑誌『Ms.』が1980年代前半に32の大学を対象に行った大規模調査で明らかになった。本書はその調査を含むさまざまな統計から、「顔見知りによるレイプ」の実態、後遺症、加害男性、警察・司法・大学の対応、対策などを記し、88年に米で刊行された名著の待望の翻訳版。  レイプ被害を受けたのに、「顔見知り」ゆえに被害者自身がレイプと認識せず、否定し、自己嫌悪に陥り、警察に届けない。後遺症はレイプと認識しない分、深刻に。加害男性は「普通の男性」。男性優位社会で育つ中で女性の訴えより自分の欲望を優先させる術を学ぶ―。  今、世界は「不同意性交」処罰の流れに。本書はジェンダー・人種・階級分析に限界はあるが、刑法改正見直し論議中の日本で、今こそ読まれてほしい。(JH)

香港デモ戦記

小川善照 著

  • 香港デモ戦記
  • 小川善照 著
  • 集英社860円
 香港が心配だ…。2014年の雨傘運動以来、香港を追うジャーナリストが、昨年の「逃亡犯条例」に抗するデモまでの抗議者たちの行動、言葉、表情、感情の機微を取材した書。小さい火炎瓶を持ち歩く少年の存在など、緊張の日々にヒリヒリする。そんな抗議の若者たちは日本のアニメ好き。「オタク」的ノリはイマドキだ。  デモする人々はブルース・リーの言葉、「Be Water(水になれ)」を胸に、水のように形を変えては押しもどす運動を目指す。雨傘の時と異なりリーダーをつくらず、指示されるのではなく、個人が考えて行動する。また警察がデモに激しく対峙するよう変化したことは何を意味するのか。そして市民同士は、民主派、親中派に加えて新しい主張も登場し、レッテルを貼り合い分断が進んでいるという。  読者は本書以後の香港事情を知っている。それでも“沈黙しない”という香港人の信念を知ると、私も政治に黙ってなんかいられない、と強く思う。(三)
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