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ふぇみんの書評

加害者家族バッシング 世間学から考える

佐藤直樹 著

    加害者家族バッシング 世間学から考える
  • 佐藤直樹 著
  • 現代書館1800円
日本では、殺人などの重大犯罪の「犯人」の家族に対し強いバッシングが起きる。これはこの国特有の現象で、西欧には存在しない「世間」によるものだとし、バッシングの構造を「世間学」の観点から論述しているのが本書だ。  犯人とされた人の家族は、メディアが執拗に追いかけ、嫌がらせの手紙が山ほど届き、自殺に追い込まれた例もある。犯罪率は低いが自殺率は高い日本。「人に迷惑をかけてはいけない」という「世間」が背景にあるのも頷ける。欧米の家族や、一神教の社会と比較し、日本の世間は、身分制、個人の不在、非合理的・呪術的な関係などがあると分析。「ニッポンの呪術性」は「ケガレ」にも通じ、犯罪・犯罪者をケガレ視すること、ケガレや呪術性は天皇制や死刑制度支持とも関わるなどに興味がわいた。  著者は「加害者家族には人権はない」という「当たり前」を変え、世間から常に要求される「高度な自己規制」の自覚と解体を説く。コロナ禍の中、強く同感。(う)

彼女たちの部屋

レティシア・コロンバニ 著 齋藤可津子 訳

  • 彼女たちの部屋
  • レティシア・コロンバニ 著 齋藤可津子 訳
  • 早川書房1600円
小説『三つ編み』で、3つの土地で生きる女性3人を行き来しながら描いた著者。本作ではパリを舞台に時代を隔てた2人の女性を中心に物語る。  ソレーヌは弁護士。依頼人の自死をきっかけにうつになってしまう。ブランシュは100年前、キリスト教団体「救世軍」で社会事業に邁進していた。ブランシュが渾身の力で建てた「女性会館」は、700もの個室や大食堂を持ち、貧困や暴力で家を失った女性たちのための「部屋」となる。現在も変わらず女性たちで賑やかなそこに、ソレーヌがボランティアとしてやってくる。貧困のヒの字も知らないソレーヌは思いっきり腰が引けていたが、ズンバのレッスンを契機に心を開いて…。周囲に受け入れられるまでのドキドキが、我が事のよう。難民や移民、DVからの避難者、路上生活女性。背景さまざまな女性たちの、1人が手にする人生ははかなくても、他者と響きあってつながる様子が鮮やか。前を向いて歩こうと思う。(三)

ホハレ峠 ダムに沈んだ徳山村 百年の軌跡

大西暢夫 著

  • ホハレ峠 ダムに沈んだ徳山村 百年の軌跡
  • 大西暢夫 著
  • 彩流社1900円
 岐阜県揖斐郡徳山村は日本最大のダムの底に沈んだ村だ。近隣の町で育った著者は、1991年、廃村4年目の徳山村に東京から通うようになり、廣瀬ゆきえさんに出会う。村の最も奥の門入集落に、ゆきえさんはただ1人で最後まで残った。本書はゆきえさんが語った人生と地域の記録だ。  ゆきえさんは18年生まれ。14歳で蚕の繭を背負ってホハレ峠を越え、冬には町の紡績工場へ。24歳で北海道の開拓村に嫁ぎ、戦後は夫婦で農業試験場で働き、55年に村に戻る。会話に出た地名を頼りに著者がそれらの土地を訪ね、人の縁を紐解く過程はスリリングだ。  戦後、村の豊かな山林は、王子製紙が伐採して瞬く間にはげ山となり、その後にきたのがダム計画だった。小さな村の資源は日本の経済成長のために使われた。「村の価値は現金化され、後世に残せんようになったんや。(補償)金を使えば使うほど、村を切り売りしていくような痛い気持ちや」。ゆきえさんの言葉が切ない。(い)
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