WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

死を想え(メメント・モリ)! 多死社会ニッポンの現場を歩く

中日新聞社会部 編

    死を想え(メメント・モリ)! 多死社会ニッポンの現場を歩く
  • 中日新聞社会部 編
  • ヘウレーカ1800円
本書は中日・東京新聞などに掲載された連載「メメント・モリ」に加筆・修正されたもの。「メメント・モリ」は本書の題名「死を想え」という意味。団塊の世代が75歳以上になる2025年以降の「多死社会」を見据え、残骨灰、無縁墓、孤独死と遺品、延命治療、緩和ケアなど、死をめぐる現実と課題をていねいに追っている。  死を目前にした人の心を癒やす臨床宗教師や、最期の時を過ごす「ホームホスピス」などの存在を知り、このような選択肢の広がりを期待するが、緩和ケア病棟がない地方の現実や、介護労働者の絶対的な不足、延命治療の(中止も含めた)選択の難しさなど、大きな課題もみえる。自治体や民間まかせにせず、国に対策を求めるなどしなければ、安心して死を迎えられそうにない問題も多々ある。故人の遺志に沿っても、家族や友人は後悔することもある。日頃から死の話をすることが大切かもしれない。死を想うことはよりよく生きることと改めて思う。(ん)

沖縄の祈り

大城貞俊 著

  • 沖縄の祈り
  • 大城貞俊 著
  • インパクト出版会1800円
沖縄のある大学の大学院を舞台に、2018年10月の県民大会の後から物語は始まる。主人公は高校教員を休職して沖縄戦後詩を学ぶ上原、沖縄文学を学ぶ韓国からの留学生ジジョンの2人だ。  物事を自明のものとしてはいけないという指導教員の言葉に背を押され、沖縄と沖縄文学への理解のために、二人は聞き取りや、学生・若者・高齢世代へのアンケートに取り組み、また、知人たちと共に辺野古のゲート前も訪れる。  聞き取りの対象者は、沖縄の戦争と現在・未来を語る、実在の人物たちだ。沖縄戦の体験者たち、元ハンセン病患者の歌人のほか、劇団創造の演出家・幸喜良秀や作家・大城立裕などの文化人や芸術家、教育者など多岐にわたる。沖縄の歴史と記憶、個々の重い体験に基づく言葉が本書にとどめられる。  作中、新聞記者の謝花直美さんは「今も闘っているのだから、基地問題で負けたことはない」と。「沖縄の祈り」の実現のため、私たちがなすべきことを考えたい。(ね)

ルポ つながりの経済を創る スペイン発「もうひとつの世界」への道

工藤律子 著

  • ルポ つながりの経済を創る スペイン発「もうひとつの世界」への道
  • 工藤律子 著
  • 岩波書店2000円
 リーマンショック、コロナ禍で、貧困、格差、環境破壊、分断や排除を生み出す今の資本主義経済の限界を思い知った私たち。では「もうひとつの世界」は可能か? スペインにその答えがあるという著者のルポ第2弾。  スペインではリーマンショックの時に、政府が大企業を優遇、医療や社会福祉予算を削減したことから、大規模な市民運動「15M」が始まった(後に市民政党「ポデモス」が誕生)。市民らはマドリード市を住民参加型市政に変えるなど、真の民主主義を実現し政治を変えた。そして「持続可能性」「環境保護」「人間中心」を特徴とする「社会的連帯経済」―社会的課題を解決し、「つながり」を取り戻す取り組みが盛んで、補完通貨、「時間銀行」、企業とは違う「労働者協働組合」を紹介。  人が人らしく働き、生きることは可能だという希望を確かに示すと共に、コロナ後の状況や「ほんとに食ってける?」など、著者に聞きたいことが次々と。日本に、私たちにこれが必要だ。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ