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ふぇみんの書評

裏切りの大統領マクロンへ

フランソワ・リュファン 著 飛幡祐規 訳

    裏切りの大統領マクロンへ
  • フランソワ・リュファン 著 飛幡祐規 訳
  • 新潮社2000円
 著者フランソワ・リュファンはジャーナリストでドキュメンタリー監督、そして左派政党「屈服しないフランス」の国会議員である。2018年11月に始まった「黄色いベスト運動」は、メディアやエリート知識人から“無教養な輩の反乱”と揶揄されるなか、リュファンは不公平な税制と貧富の格差への抗議だとして民衆側に寄り添った。仏大統領のエマニュエル・マクロンとは同郷で同じ名門校の出身で、本書では、「あなた」「僕」と手紙のように語りかける。しかし、内容は辛辣だ。リュファンは政権の内側から、マクロンとそれを取り巻くオリガーク(既得権益層)たちの結託した関係を暴いていく。欺瞞と虚飾にまみれた特権支配階級と富裕層への優遇政治。一方マクロンから「取るに足りない者たち」と蔑まれ、重税に搾取され底辺で喘ぎながら生きる民衆の現実を追う。リュファン渾身の一作。  さて、これはどこの国の話。フランス。だがまったくそっくりではないか。(ぶ)

彼女の体とその他の断片

カルメン・マリア・マチャド 著 小澤英実ほか 訳

  • 彼女の体とその他の断片
  • カルメン・マリア・マチャド 著 小澤英実ほか 訳
  • エトセトラブックス2400円
 女の体をめぐる8つの短編小説を、女性翻訳家らが手がけた。ひりつくような、それでいて温かな浮遊感を味わった。キューバ移民3世で米国人の著者は、2017年に本書でデビューするや全米批評家協会賞など9つの賞を受賞。レズビアンを公言し、18年には文学界#MeTooの一翼を担った。  8篇は異なるテイストだが、女の存在や体が抱える「欠落感」(社会が女に与える)が描かれる。首にリボンを付けた女は、リボンが彼女の体の一部であるのに結局夫にほどかれ(「夫の縫い目」)、若い女が透明になる病が流行って女は恋人を失い(「本物の女には体がある」)、胃を切除して肥満を脱した女は“愛してあげられなかった”肉体の気配を感じ(「八口食べる」)。殺された性被害者の姿を見、声を聴く女(「とりわけ凶悪」)、DVの女の恋人から“ふたりの赤ちゃん”を一方的に渡される女(「母たち」)―。  断片を連ねた鮮やかな描写、含意の余韻にひたり、著者の確かな目線に心開かれた。(下)

女たちの中東 ロジャヴァの革命 民主的自治とジェンダーの平等

ミヒャエル・クナップほか 著 山梨彰 訳

  • 女たちの中東 ロジャヴァの革命 民主的自治とジェンダーの平等
  • ミヒャエル・クナップほか 著 山梨彰 訳
  • 青土社3200円
 草の根民主主義のもと、女性の自由を重んじ、ジェンダー平等を実現する独立自治政府が、驚くべきことに家父長制が根強い中東に現存する。それは2011年以降の民衆蜂起を礎に、北部シリアのロジャヴァで創設された。他国では、民族や宗教の違いをめぐり、血で血を洗う紛争が勃発しているのに、奇跡的に多民族・多宗教が共存し、多様な文化が花開く。  戦争で性暴力が蔓延するだけに、女性の自衛を重視。薔薇でさえトゲで身を守ると「薔薇の論理」と名付けた思想が息づく。表紙の微笑みをたたえた女性兵士がその象徴だ。  地球の持続可能性を提唱する、米国のエコロジスト、ブクチンの影響を受けている。イスラム国との戦闘で多くの男手を失ったが、「女性が子どもと暮らし、生活の糧を得、技術や知識を身に付け、医療や自衛の方法を学び、励まし合って元気になる自給自足のエコロジー共同体」はユートピアのよう。ドイツの女性文化人類学者らが150人余りを取材した労作。(慶)
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