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ふぇみんの書評

それを、真の名で呼ぶならば 危機の時代と言葉の力

レベッカ・ソルニット 著 渡辺由佳里 訳

    それを、真の名で呼ぶならば 危機の時代と言葉の力
  • レベッカ・ソルニット 著 渡辺由佳里 訳
  • 岩波書店2200円
 「自由と民主主義の国アメリカ」を知れば知るほど、人種差別、女性蔑視など社会を切り刻む分断の傷のあまりの深さに改めて驚かされる。作家、歴史家、活動家である著者は、傷の受け手たちの声を聞き取り、言葉を与え、物語を紡ぐ。真の名で呼ぶことは、ないことにされてきた存在の本当の姿を世に知らしめることである。本書はこの3~4年に書かれたエッセイを中心にまとめられている。  大統領選に挑んだヒラリー・クリントン、白人警官に不当に銃殺された移民2世の青年、理不尽な裁判で死刑囚として25年間刑務所に閉じ込められている黒人の男性…。白人、男、異性愛者が正統性を保持し支配する社会の中で、それらに属さない者たちを語ることにより、既存の物語を壊し、解放し、新しい物語の創造を試みる。社会はすぐには変わらない。だが、真の名を見つけて語り伝えることは誰かの可能性を開くパワーになる。それはいつか希望を現実にかえる力となりうる。(優)

野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る

野中モモ 著

  • 野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る
  • 野中モモ 著
  • 晶文社1500円
「私」の視点で「自主的に、気軽に、小規模で」出版するZINE(ジン)。手書きや安価な印刷で、紙1枚の新聞から冊子など形もさまざま。1970年代パンクや第3波フェミでも活躍したが、SNS全盛期の今、なぜジンか。自らジンを作り、自主制作物のウェブショップも営む著者が、ジンとの出合い、その豊かさ、可能性を示す。  著者は学校の友人から映画同人誌を借りた際に、「『識者』の意見が違っていると思ったら自分で発信すればいい」と気づいた。インタビューしたジンの作り手たちは、プロじゃなくても完璧じゃなくても作る、と。作ることが「セルフセラピーみたいな効果もある」(カナイフユキ)。ジンの集いやジン取り扱い店主の紹介からは、ジンが作り手と読み手を特別な関係で結ぶことがわかる。主体性を取り戻し、他者とつながる。ジンで世界をすぐに変えられなくても、「社会の空気に作用する」と著者。ジンの秘めた変革力に驚くが、それより何より、ジンは楽しい!(P)

華僑二世徐翠珍的在日

徐翠珍 著

  • 華僑二世徐翠珍的在日
  • 徐翠珍 著
  • 東方出版1500円
 著者は大阪で、公務員の国籍条項、外国人登録法、大赦拒否、靖国合祀拒否、戦争法違憲訴訟等を闘い、市民共同オフィスSORAを主宰し、運動の活動拠点を作った。  本書は母親のエピソードから始まり、日本が華僑を「シナ」と侮蔑し、敵視・排外・弾圧し続けた艱難辛苦の歴史を私たちに突きつける。私は傍観者であることに胸を貫かれる。戦前、天皇の名の下に押し付けられた日本国籍を、憲法施行前日一方的に奪われた著者は、常に日本の平和と民主主義を守る闘いの最前線に立つ。憲法9条を守るため、13年間毎月駅頭に立ちビラを配り続ける。  「殺し合わされるもの」に向き合うこと、共に生きるとは歴史認識を正し戦後処理を問い直し築くことだと、真摯な取り組みで日本人に呼びかけ続ける。一貫して、母親から受け継いだ中国人としての誇りと、人間としての尊厳を求める生き様は日本の民衆の差別を鋭く抉る。  私はこの本の香りをしっかり胸に忍ばせる。(文)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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