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ふぇみんの書評

わたしの戦後史 95歳、大正生れ、草の根の女のオーラルヒストリー

谷たみ 語り 堀江優子 編著

    わたしの戦後史 95歳、大正生れ、草の根の女のオーラルヒストリー
  • 谷たみ 語り 堀江優子 編著
  • 梨の木舎2600円
 本書は、仕事と子育てを担う生活者である傍ら、現在に至るまで絶え間なく市民運動に関わり活動されてきた谷たみさんの、聞き書きによるライフヒストリー。  戦時下に高等女学校を卒業し勤労動員、敗戦後は福島の児童養護施設職員を経て上京後、ベトナム反戦運動に注目し「やきいもの会」に出合う。この10人ほどの女性たちのグループからスタートする彼女の活動は、入管・国籍法問題、「アジアの女たちの会」での「買春観光反対」をはじめとするジェンダー、第3世界の貧困問題、「女たちの戦争と平和資料館」(wam)設立への足掛かりとなる「慰安婦」問題、脱原発運動など多岐に渡る。その道のりは戦後の草の根市民運動の歴史であり貴重な記録である。  〈戦時下に声を上げることができなかった〉という自身を振り返り、〈できる範囲で活動し協力する〉というスタンスで活動を続ける谷さんの声は、これからの運動を支えていく者の背中を優しく押してくれる。(え)

「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ

長島有里枝 著

  • 「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ
  • 長島有里枝 著
  • 大福書林3300円
著者(1973年生まれ)はヌードのセルフポートレイトなどで知られ、90年代には「女の子写真」と呼ばれる一大潮流として、「僕ら」(=写真界で権力を持つ中高年男性)に“賞賛”された写真家。本書は、近年大学院で研究に取り組んできた著者の修士論文を加筆・修正し、当事者として、ブームを作った権力のありようと実態を暴き、再評価したものだ。  「僕ら」は「女の子写真」がカメラの軽量化で出現し、技術の拙さと視野の狭さが新鮮と貶め、他者化する言説を流布。著者は一つ一つに異議を申し立て、男性写真家が疑わない撮る側と撮られる側の権力関係を問い、その抵抗からセルフポートレイトを撮ったと明らかに。その実践は「ガーリー」に象徴される90年代から米国を中心に花開いた第3波フェミニズムの一環であると再定義する。  心震えるフェミニズムの真髄の実践の先には、フェミが切り開く豊かな表現と、それにつながる女性たちが見えてきた。(智)

沖縄「戦争マラリア」 強制疎開死3600人の真相に迫る

大矢英代 著

  • 沖縄「戦争マラリア」 強制疎開死3600人の真相に迫る
  • 大矢英代 著
  • あけび書房1600円
沖縄戦を「秘密戦」という観点から描いたドキュメンタリー映画『沖縄スパイ戦史』の共同監督である著者。本書は著者が「戦争マラリア」を追い始めてから映画製作に至るまでの10年間の記録。  著者は大学院生の時、戦争マラリヤの被害が大きかった波照間島の、ある夫婦の家で8カ月過ごす。その日々を描いた章が心にしみる。軍命によりマラリアが蔓延する山中に移住させられ、凄絶な体験をした人々が吐露する言葉を真摯に掬い取る、その取材姿勢に共感する。重い証言を聞き「自分勝手な作品は作れない」と、伝える側の責任と使命感をもち、琉球朝日放送記者時代には沖縄の米軍基地問題などを取材した。  本書の後半は、沖縄戦の歴史を追い、「陸軍中野学校」の卒業生で波照間に派遣され、移住を指揮した「スパイ」の実像に迫っていく、映画とはまた一味違う迫真のルポだ。軍隊の構造、国家と民衆の関係を鋭く突く本書に、民を切り捨てる国家権力の怖さを改めて思い知る。(く)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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