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ふぇみんの書評

一粒の麦死して 弁護士・森長英三郎の「大逆事件」

田中伸尚 著

    一粒の麦死して 弁護士・森長英三郎の「大逆事件」
  • 田中伸尚 著
  • 岩波書店2700円
 1911年に幸徳秋水ら12人が死刑になった日本近代史最大の思想弾圧「大逆事件」。本書は61年再審請求の主任弁護人森長英三郎の伝記である。死刑を免れた多くも獄中死し、戦後の生存者はたった4人。森長は自身を大逆事件の代理人11人に続く12人目と位置付け、未曾有の国家犯罪に立ち向かう。再審請求は棄却されたが、その取り組みは実を結び「人民の名において」「復権」を勝ち取った。戦後も隠れるように生きてきた遺族らを追い、丹念に話を聞く森長。裁判後も慰霊碑建立等被害者の名誉回復に尽力した。  著者は森長に重なるように事件を追い、森長自身に迫る。また事件の当事者や、共に事件を追った一人一人が「一粒の麦」として歴史を正しく書き換えるために生きた様を伝える。権力に屈せず、事件を記憶し続け、奪われた死者たちの尊厳を取り戻すために生涯を捧げた森長。  同伴者としての「道行」を、身を削るような熱量で世に出した著者の想いも伝わる労作。(の)

日中戦争への旅 加害の歴史・被害の歴史

宮内陽子 著

  • 日中戦争への旅 加害の歴史・被害の歴史
  • 宮内陽子 著
  • 合同出版1600円
日中十五年戦争が始まった年から今年で90年。戦争にまつわる現場を、20年以上にわたって毎夏訪問する「神戸・南京をむすぶ会」というグループがある。単なる観光旅行や懺悔のための行脚ではない。私たち日本人が忘れかけ、あるいは目を背けがちな加害の歴史に光をあて、幸存者―生きのびた人―の言葉に耳を傾け、綻んだ日中の絆を再び結ぶための旅。それを率いるのが本書の著者である。  日本軍による侵略の跡を訪ね、その実態、そこで出会った人たちとの交流は読み応え十分。北の旧満州から南は海南島、雲南省まで、これまでの訪問地を示す地図がある。あの戦争がどれだけ現地の、しかも広範囲の人々に苦しみをもたらしたか、多少は想像の助けになるはずだ。  旅行やビジネス、留学で中国に行くことがあるのなら、近くにある侵略の爪痕を訪れてほしい。自分だけでなく、きっと日中関係の明日を照らすものとなるだろうから。(た)

政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない

田中信一郎 著

  • 政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない
  • 田中信一郎 著
  • 現代書館1700円
著者は長野県地方創生総合戦略の策定への参画など、公共政策の実務と研究を積み重ねてきた。  与党や支持団体(業界・利益団体)の求心力を高める経済政策の「総力戦」、「美しい日本」という規範にあらわされる「精神総動員」。これらと度重なる低投票率に助けられ、安定性を確保してきたのが安倍政権だと著者は見る。そして、なぜ少子化が進むのかを出発点に、アベノミクスを6年以上実施しても目標の3%成長に届かない、日本の「苦い現実」を、経済政策、政治・社会構造などから分析する。  喫緊の課題である人口減少、経済成熟、気候変動に対応するには、経済成長モデルにしがみつく旧来型の政財官一体の政権の交代と、経済・社会政策の転換が急務と説き、野党は大きな国家方針の共有のために準備を進め、対話の輪を広げよと呼びかける。  著者の分析・指摘は、観念的でもイデオロギー的でもなく、具体的だ。政治任せではなく、私たちにも行動を促す。(き)
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 6カ月4800円、1年9600円
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