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ふぇみんの書評

痴漢とはなにか 被害と冤罪をめぐる社会学

牧野雅子 著

    痴漢とはなにか 被害と冤罪をめぐる社会学
  • 牧野雅子 著
  • エトセトラブックス2400円
 多くの女性(男性も)が経験する性暴力、痴漢。「痴漢は犯罪」のかけ声も広まっているが、近年痴漢と言えば「痴漢冤罪」が対置され、後者の声は大きい。なぜか。戦後以降の雑誌記事や新聞から歴史的、文化的に明かにした。  被害と調査件数との乖離、痴漢を性的自由の侵害と捉えない立件や供述調書のあり方はもちろん、1962年に東京を皮切りに迷惑防止条例で痴漢が検挙されることになったのに、2000年代に入るまで、痴漢は男性の“文化”“ブーム”だったことが衝撃。著名人の加害手記、痴漢しやすい路線と手口の紹介…。それが00年に痴漢無罪判決が続くと、痴漢ブームは冤罪ブーム一色へ。痴漢は性依存症という新視点にも著者は疑問を呈す。それはブームを享受した多くの男性らを無罪放免にしないか―。  被害を軽視し、冤罪という司法の問題を女性にかぶせ、ブームを忘れ我こそ被害者と言い募る男性たち。呆れ果てつつ、フラワーデモの意義を噛みしめた。(P)

映画でみる移民/難民/レイシズム

中村一成 著

  • 映画でみる移民/難民/レイシズム
  • 中村一成 著
  • 影書房2500円
韓国の映画作家、イ・チャンドンは「芸術は、人を他者の痛みに共感するよう促すことができる」と言う。権利を奪われ迫害をうける人たちのための「変革」を信じて闘った映画作品がある。“不法移民”たちが闘うケン・ローチの『ブレッド&ローズ』や、アメリカの原罪を告発した『ソルジャー・ブルー』など、難民、移民、レイシズムを描いた20本を取り上げて解説したのが本書だ。著者は、それぞれの地域や問題の経緯や歴史背景を詳らかに語る。そしてさらに日本の状況を紐付けて逆照射する。日本社会が顧みようとしない植民地支配や従軍「慰安婦」、技能実習生などの問題をいったいどうするのかと、取材に裏打ちされたジャーナリストの力強い文章で頁の中から訴えかけてくる。  単館系、社会派作品を追いかける映画ファンのシネマガイドとしてはもちろん、移民、難民、レイシズムの問題に興味を持つ人は読んでおきたい一冊。読書の前後に作品のDVD鑑賞がお勧めだ。(公)

ディープフェイクと闘う 「スロージャーナリズム」の時代

松本一弥 著

  • ディープフェイクと闘う 「スロージャーナリズム」の時代
  • 松本一弥 著
  • 朝日新聞出版1600円
日本でもフェイクニュースが吹き荒れている。AIを駆使した、真偽を見まがうディープフェイク動画などが出現していると著者は書く。この現象に抗い、闘うにはどうするか。著者は、現職記者としての仕事の合間をぬって米国を訪れ、各地の研究者やジャーナリスト、NPO関係者に会った。  米国ではメディア全体として中間層がどんどん薄くなる一方、右派メディアが肥大化し、ナショナリスティックな内容より他者を攻撃するヘイトメッセージが膨れ上がっている。そのなかで取り組まれる、フェイクニュースを巡る研究者らのさまざまな活動が示唆に富む。  日本では公文書が官邸のご意向に沿って隠蔽、廃棄、改ざんされる。著者はこれを「歴史に対する反逆」と指摘する。これらに対抗するために、ファストなニュースではない、「スロージャーナリズム(検証ジャーナリズム)=調査報道」こそが、民主主義を守るための闘いだという。私たちも観客ではあり得ない。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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