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ふぇみんの書評

UNSTOPPABLE(あきらめない)

ゼン・ハニーカット 著 松田紗奈 訳

    UNSTOPPABLE(あきらめない)
  • ゼン・ハニーカット 著 松田紗奈 訳
  • 現代書館1500円
 表題は「あきらめない」の意味。「信念を持って闘う母親の物語」と帯にある。母親である私には少々気の重いタイトルだ。が、命を育む食の安全は見過ごせない。  米国の一主婦であった著者は、我が子の苦しみの原因が主に遺伝子組み換え作物に残留する除草剤グリホサートであることをつきとめ、立ち上がる。それは全米の母親が連帯する組織へと発展していく。コミュニティーをつくり、農薬メーカーのモンサント(当時)や、モンサントの言いなりの政府機関と対峙する。他方、著者は食の安全をめぐる日本でのさまざまな草の根の取り組みに敬意を表している。だが、国家レベルでは、種子法の廃止、グリホサート基準値の相次ぐ緩和など、背筋が凍るような食の安全崩壊の実態がある。  利益のために子どもを育てるのではない親が、意思決定の場にもっと関われたらどれだけ社会は違ったものになるだろう。本書は一人の親が一歩を踏み出すのを応援するために書かれたのだ。(優)

時をかける台湾Y字路 記憶のワンダーランドへようこそ

栖来ひかり 著

  • 時をかける台湾Y字路 記憶のワンダーランドへようこそ
  • 栖来ひかり 著
  • ヘウレーカ1700円
著者は現在台北で暮らす日本人女性。日本の新聞記者との同行取材を皮切りに、台北を中心に台湾各地で見られる多様なY字路を紹介している。  Y字路の多くは川や用水に由来し、その一つ一つに原住民時代、さらには半世紀に及ぶ日本統治時代を含めた知られざる台湾の歴史が見え隠れする。悲しき台湾人遊女の物語、アヘンとの関わり、暗躍する政治家たちの素顔、そして現在はビオトープとして近隣の人々から愛されるY字路など、いつもは何気なく通り過ぎてしまうような道にも多くの人々の喜怒哀楽が詰まっていることが伝わってくる。  昨今の台湾は、絶品スイーツ、かわいい雑貨、美しい風景などの紹介が多く、それもまた彼の地の一面ではあるが、一歩踏み込んだ台湾の成り立ちをY字路から振り返ることができる本書の内容には引き込まれるものがある。この本を片手に台湾を訪問し、地元民に交じりY字路をうろついてみたくなる、そんな一冊だ。(タ)

四隣人の食卓

ク・ビョンモ 著 小山内園子 訳

  • 四隣人の食卓
  • ク・ビョンモ 著 小山内園子 訳
  • 書肆侃侃房1600円
韓国で#MeTooが燃え広がった2018年に刊行された小説。  舞台は他のコミュニティーから隔絶された山あいに、韓国政府が少子化対策として建設した共同住宅。入居条件は、入居10年以内に子どもを3人つくること。入居した4家族は共同保育をすることに。助け合い、自然豊かな場所でオーガニックに暮らす“理想の共同体”―のはずが、4家族間、夫婦間、子ども間にも横たわる権力関係や抑圧、その心情がこれでもかと暴き出される。丁寧な暮らしを支える家事労働に忙殺される妻の鬱屈、非正規雇用やフリーランスの妻への差別と、仕事と家事・育児での疲弊、家事軽視・女性蔑視の夫、下の子の面倒を任される最年長の女児…。違和感や不信感を笑顔で誤魔化し、空気を読んで暮らそうとするが、限界が訪れて―。  小説のそこここに私もよく知る空気感が。日本の政治家も「子どもは3人」とほざいたが、この状況で産んでられるか!との妻の怒りは私たちの怒りだ。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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