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ふぇみんの書評

殺す親 殺させられる親

児玉真美 著

    殺す親 殺させられる親 重い障害のある人の親の立場で考える尊厳死・意思決定・地域移行
  • 児玉真美 著
  • 生活書院2300円
重度心身障害者の親であり、優生思想・尊厳死問題などで発言を続ける著者が、子どもの医療をめぐる意思決定や、「死ぬ権利」「無益な治療」論などを論じている。  海外でも日本でも医療コストや臓器移植などを背景に、「無益な治療」として「治療の中止」が広がり、「尊厳死」「安楽死」もじわじわと肯定されている現代…。治療に値しない対象者像が認知症の患者、高齢者、重度障害者などへと拡大され、それらの「生きるに値しない命」は地域と家庭の中に廃棄され、「親(家族)に殺させ」ようとする力が働いていることを著者は告発する。障害者の親(特に母親として)の苦悩を見つめ、医療者、障害当事者とは別の視点から「無益」概念の危険性を訴える。  ドキリとするタイトル通り、命の選別に恐怖する重い内容である。私たちは分断されぬよう、「弱さ」を認め合って繋がりたいとの著者の思いに同感だ。(ん)

神戸モダンの女

大西明子 著

  • 神戸モダンの女
  • 大西明子 著
  • 編集工房ノア2000円
戦前から戦後の激動期、神戸を舞台にした小説。著者の夫の母・多津子をモデルとし、折々聞いていた彼女の波乱に富んだ人生を残したいと、退職後に文学学校で文章修行をして書き上げた。少々生硬だが、著者の意気込みと想いが詰まる。  中産階級の家に生まれた多津子は、ミッション系女学校で出会った女性教員に導かれて、自立の道をさぐる。女学校で習ったダンスを“武器”にダンサーになって稼ぎ、戦中は温泉宿を経営。戦後は過酷な靴工場へ。そして、得意の裁縫にセンスの良さを加えて家族を養う。世界恐慌や戦争、朝鮮特需等が背景になるが、強い意志で生き抜く多津子の姿に、現代の私も背中を押された。周囲の人物もいい。とことん自己中心的な実母、“極楽とんぼ”の夫、たくましいダンサー仲間…。女同士の頼り合いも心強い。敗戦を知って、頬が緩み、声を上げて笑いたくなったという多津子は小気味良い。ワクワクしながら一気に読み通した。(三)

日本で生きるクルド人

鴇沢哲雄 著

  • 日本で生きるクルド人
  • 鴇沢哲雄 著
  • ぶなのもり1600円
現在、日本にいるクルド人のうち約1500人が埼玉県川口市を中心に集住する。多くはトルコの迫害により安全と平和を求めて「難民」として来日、その後、家族や親族を呼び寄せている人々だ。「帰れ」と言われてもトルコに帰るわけにはいかない。度々の申請にもかかわらず、クルド人は1人も難民認定を受けていない。  長期の入管収容で精神的肉体的に傷ついた人、「仮放免」のため、働くことも県外に出ることも制限を受けている人、幼い時に来日し努力して進学したものの、将来への希望を持てず中退の道を選ぶ人…。著者は丁寧に話を聞く。  入管に収容されている女性は著者への手紙に書く。「ぐあいはわるいです。なかのびょいんはなにもしてくれません。つみはなんですかときくとがいじんだからとかいわれて。日本そだちですよ。わたしはどこにいけばいいんですか?」  彼らの苦境は、日本の政治の結果だ。迂遠だがまずは本書を手に取ることから始めたい。(き)
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