WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

帝国に生きた少女たち 京城第一公立高等女学校生の植民地経験

広瀬玲子 著

    帝国に生きた少女たち 京城第一公立高等女学校生の植民地経験
  • 広瀬玲子 著
  • 大月書店2500円
植民地に生きた経験は、後の人生にどんな影響を及ぼしたのだろうか。著者は、1920年代から40年代の日本占領期に京城(現ソウル)の女学校に通っていた元・少女たちにアンケートやインタビューを行い、植民者2世の植民地経験と、朝鮮人や戦争、植民地をどのように捉えていたのかを明らかにしていく。  第一高女はエリート校で、女学生たちは「開放的」校風の一方で、被植民者を「指導」する立場を期待されていた。インタビューでは無邪気に郷愁にふける人もいれば、植民地支配を批判的に考える人もいた。意識が大きく変わるのは敗戦と引き揚げの経験だった。引き揚げ後は一瞬の安堵の後、「内地」の人々から植民者の加害を突きつけられ、差別もされたという。後に作家になった女性は思案を重ね、植民地支配と個人の責任を問う作品を世に出していることも紹介される。  葛藤し続けることが植民地主義の克服への道、という著者の言葉は重い。(三)

お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

北村紗衣 著

  • お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門
  • 北村紗衣 著
  • 書肆侃侃房1500円
 シェイクスピアや舞台芸術史が専門の著者が、古今東西(若干英国寄り)の演劇、映画、小説に、「フェミニスト探偵」のごとく点と点を結んで斬り込む。ユーモア溢れる軽妙な語り口で、読み手を「檻」(偏見)から解放し、知らない作品はもちろん、知っている作品にも新たな彩りを与える。   著者が「内なるマーガレット・サッチャー」を追い出すために思い浮かべるメリル・ストリープ、“腐女子”が読むとエロい『嵐ヶ丘』、超マッチョ映画『ファイト・クラブ』が「男らしさ」解体のロマンティック映画? さらに全体主義には鋭いのに性差別には疎いディストピア小説…。  さすがと思うのは、作品の素晴らしい点とダメな点をきちんと分けて価値を捉えているところ。そうすることで翻案が可能になり作品の価値を現代に生かすことができる。自由になるって、世界の見方が変わるって、こういうことだ。(登)

鎮魂歌(レクイエム)

堀慶末 著

  • 鎮魂歌(レクイエム)
  • 堀慶末 著
  • インパクト出版会1800円
2007年に起きた、ネットで知り合った3人が見ず知らずの女性を強盗目的で拉致し殺害した闇サイト事件。加害者の著者は無期懲役が確定していたが、別件(強盗殺人と強盗殺人未遂)が明るみになり、今夏死刑が確定した。本書は生い立ちから3つの事件が淡々と記され、後半は、あるシスターからの手紙や、著者の手紙が収録されている。  殺害の箇所ではその残虐性に吐き気がした。見通しが甘く短絡的、出会う女性たちにヒモのように甘えるずるい男。だが、彼が極悪人には思えなかった。周りには善良な人が多く、逮捕後も女性たちが支援を申し出ている。人と関係性を持って生きてきたことがわかる。  なぜ殺人を犯したのか。生い立ちや環境、集団心理の影響などがあるのだろうか。本人の手記は犯罪抑止の重要な鍵となるはずだ。著者は残された時間を贖罪に捧げるという。彼には生きて(執行されずに)もっと書き続けることができるようにと願う。(く)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ