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ふぇみんの書評

ボランティアとファシズム 自発性と社会貢献の近現代史

池田浩士 著

    ボランティアとファシズム 自発性と社会貢献の近現代史
  • 池田浩士 著/
  • 人文書院4500円
  我が国でボランティアが一般化したのは1995年の阪神淡路大震災と思われているが、著者によればボランティア元年は関東大震災の1923年という。東京帝大の学生たちが学生救護団として被災者支援を開始、活動は学内から東京府内へと広がった。やがて恒常的な支援をめざし、民間の福祉活動のためのセツルメントが開設されるが、治安維持法の下でやがて解散させられる。自発的だったはずの支援運動はいつしか国によって制度化され、ボランティアも海外進出、すなわち満蒙開拓団の派遣となる。太平洋戦争が始まると、勤労奉仕も徴用工も自発的な行動とされ、特攻でさえも「全くの自発的意思」と説かれた。  このように国家がボランティアを操る手法は、失業対策として国民を労働奉仕に動員したナチスドイツに学んだものという。なし崩しに進むオリパラでもボランティアが求められている今、国家が発動するボランティアとは何か、考えるための書。(公)

ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた あなたがあなたらしくいられるための29問

佐藤文香 監修 一橋大学社会学部佐藤ゼミ生一同 著

  • ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた あなたがあなたらしくいられるための29問
  • 佐藤文香 監修 一橋大学社会学部佐藤ゼミ生一同 著
  • 明石書店1500円
 フェミは怖い? 「ホモ」「レズ」って呼び方はダメ? 女性専用車は男性への逆差別?etc、学校や職場、地域には、差別や誤解に基づく言説が多くある。それらに向き合い抵抗していくための話し方を、私たちはどう身につけたらよいのだろうか。ジェンダーを研究する大学生が、実際に直面したさまざまな疑問を集積してまとめた本書は、こうした疑問に丁寧にこたえている。  ジェンダーを勉強すると、視野が広がる一方で、いろいろなことに気がついて、つらくなることもある。相手を傷つけず、自分も傷つかずに意見を言う難しさに、悩むことも多い。  でも、ジェンダーを学ぶ上で大切なのは、正しい答えを言うことではない。間違いや誤解も含む多様な見解を持ち寄り、議論を深めることはエンパワメントにつながるのだ。知性は希望だと改めて感じさせてくれる一冊だった。(梅)

地域をまわって考えたこと

小熊英二 著

  • 地域をまわって考えたこと
  • 小熊英二 著
  • 東京書籍1600円 
地域と聞いて市区町村を思い浮かべる人にこそ、まず読んでほしい。町や村は行政の単位であって、地域とはむしろ経済や文化によって成り立つものだからである。著者は大規模団地(東京・高島平)から首都圏に近い山村、地方の産業都市(鯖江)、被災地(石巻)などの歴史的背景を解き明かしつつ、いま抱える課題、住人たちの思い、未来の可能性を探る。  都市生活に疲れて田舎を目指す人。UターンであれIターンであれ、その土地で生きるとはどういうことか。地域の活性化には、相互理解にもとづく適応と新風導入の両立が不可欠である。それなくしては、双方にとっての実りにならないから。  地域を考えることは、都市コミュニティーの再生にもつながる。都市部も頻繁に自然災害にさらされる昨今、防災が直近の安全保障であることが再認識させられた。共同体とは地域のむすびつきそのものである。同時に、地域を破壊する国策にどう立ち向かうかも忘れてはならない。(た)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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