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ふぇみんの書評

トリック 「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち

加藤直樹 著

    トリック 「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち
  • 加藤直樹 著
  • ころから1600円
 ネットには、嫌韓の社会を映すように「朝鮮人虐殺はなかった」など、「1923年関東大震災時の朝鮮人虐殺」を否定する言葉があふれている。虐殺否定論者がよく取り上げるのが、工藤美代子・加藤康男夫妻の著書『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』だ。否定論者の工藤らは誤報記事を悪用し、史料の引用にあたっては、都合の悪い箇所を隠し、都合のよい部分を切り取り、一般読者が知らないと思われる事柄は意図的に虚偽の説明をする…。こうした虐殺否定本に仕掛けられた、人を騙す“トリック”を本書はばらしてくれた。  荒唐無稽でも否定論なら拡散し、加害の歴史を抹殺したい政治家が引用し、小池都知事の犠牲者追悼式典への追悼文送付拒否など、悪影響は出ている。著者は虐殺否定論が誰かの生命を奪う可能性があること、虐殺の史実と向き合う教育や研究ができなくなることを危惧し、虐殺否定論を丁寧に誠実に検証する。その解明作業自体が貴重でおもしろい。(ゆ)

ぼそぼそ声のフェミニズム

栗田隆子 著

  • ぼそぼそ声のフェミニズム
  • 栗田隆子 著
  • 作品社1800円
 フェミニズムって何だろう、声を上げるってどういうこと?  本書は、そんな疑問を、日常のさまざまな場面を通じて柔らかく解きほぐしてくれる。  女性の貧困問題や労働問題を中心とした発言を行う著者は、フェミニズムとの出会いや、社会運動の中の性差別、ハリウッドのフェミニストムーヴメントへの違和感などを正直に語る。  フェミニズムというと、強い女性が高みを目指すような受け取られ方をされることが多いように思う。けれど彼女が丁寧に語るのは、 より些末なことと省略されてきた事柄だ。「はたらく」ことの暴力性、シューカツにおける大人たちの目線、「結婚」へのピンとこなさ…、日常の中で自分が感じた気持ちをなかったことにせず、小さな声でも、うまく話せなくても言葉にして、語り合う。この作業こそが、フェミニズムの大切な部分なのだと教えてくれる。長い夜、終わらないおしゃべりを共に楽しんだような読後感だった。(梅)

禁じられた郷愁 小林勝の戦後文学と朝鮮

原佑介 著

  • 禁じられた郷愁 小林勝の戦後文学と朝鮮
  • 原佑介 著
  • 新幹社2500円
小林勝は、朝鮮植民者2世という出自を持つ作家で、主著は『断層地帯』『チョッパリ』。1971年に43歳で病没し、ほとんど「忘れられた」小林を、朝鮮文学の若き研究者の原佑介は、今の時代に蘇らせるために本書を著した。  小林は朝鮮戦争に反対して火焔ビンを投げて捕らわれ、留置場でともに闘った在日朝鮮人が有罪-「本国」送還(→処刑)されていく理不尽を見た。小林は、「日本が植民地帝国であった『過去』が、戦後の『現在』そして『未来』そのものと一体であること」を知り、その憤怒から書くことを始めた。小林はポストコロニアル作家として、植民者としての自己の総括のため、「植民地主義と分断の時代を越えた先にある日本と朝鮮の未来」をひらくため、わが身を切り刻むように書き続けた。  そして今、朝鮮植民地支配の歴史も知らぬ者たちが嫌韓、ヘイトをまき散らしている。本書を通じて小林を世に押し出した原の思いがよく分かる。(喜)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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