WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

「満洲」に渡った朝鮮人たち 写真でたどる記憶と痕跡

李光平 写真・文 金富子ほか 責任編集

    「満洲」に渡った朝鮮人たち 写真でたどる記憶と痕跡
  • 李光平 写真・文 金富子ほか 責任編集
  • 世織書房2400円
 中国東北地方に住む李光平さんは、2000年前後から延辺朝鮮族自治州の村々を訪ね、同胞の人々や生活の様子を撮影。集団移民経験者、日本軍強制徴用経験者など、600人を超える人々の体験を聴き取ってきた。本書には、それらの写真と証言が収められている。  中国朝鮮族のルーツは日本の植民地支配により苦難を余儀なくされ満洲に移り住んだ人々だ。1930年代には、朝鮮総督府・「満洲国」や拓殖会社などの植民地政策によって、多くの朝鮮人が荒れ地に集団移住させられた。彼らは日本側の軍や警察に監視され、抗日闘争を展開する抗日聯軍と接触し、植民地内の戦争に巻き込まれた。日本軍「慰安婦」にさせられた女性もいる。日本植民地からやってきた侵略者側の人間というイメージももたれ、過酷な歴史を歩んできた。  李さんの写真にはのどかな田園風景と共に辛苦に耐えた人々の凛とした姿が写っている。解説も充実。日本の植民地支配の重く複雑な加害性を伝える一冊だ。(ぱ)

回復する人間

ハン・ガン 著 斎藤真理子 訳

  • 回復する人間
  • ハン・ガン 著 斎藤真理子 訳
  • 白水社2400円
 韓国最高峰の文学賞・李箱文学賞、2016年にアジア人初のマン・ブッカー国際賞を受賞した、1970年生まれの女性作家の7つの短編集。短編だからこそ、その世界観と叙情が言葉にギュッと凝縮され、一話が終わるまで息がつけず、余韻がいつまでも離れない。  主人公の女性たちは、大切な人や愛したかったけど叶わなかった友人や家族の死、自らの病、老い、障害、心の通わない夫、DVなどの痛みと苦しみを抱える。どん底に下りながら、痛みを感じることが回復への予兆であるように、何かを見つけて再生し、あるいはしようとする。とかげの手が切れても透明な新しい手が生えるように(「火とかげ」)。それは明るい未来とも限らないが、それでも生きるという原初的な力に満ちている。1編、左手が欲望のまま動いてしまう男性が破滅する話は異色だが、女性たちと対比的で面白い。  詩情あふれる、ヒリヒリするような心理描写で、心を鷲づかみされた。(智)

オウム真理教 偽りの救済

瀬口晴義 著

  • オウム真理教 偽りの救済
  • 瀬口晴義 著
  • 集英社1600円
著者はオウム真理教事件を追い続けてきた新聞記者だ。事件や公判の取材、死刑囚との面会や手紙での交流などを行ってきた。  オウム真理教は戦後の日本社会から生み出された。信者らは物質的な豊かさが優先される社会に疑問を感じる生真面目な青年たちで、麻原は神秘体験を利用して若者の空虚さを埋めようとした。その中で教団は肥大化し、武装化し、殺人にまで至るのだ。なぜか?  また、警察が「坂本弁護士一家殺害事件」や「松本サリン事件」の初動捜査を誤り、「地下鉄サリン事件」を許してしまったと指摘する。国松警察庁長官への狙撃事件も、犯人はオウムという予断にとらわれ、真犯人を逮捕できなかった。  オウムの再興がないとは限らないと著者は言う。例外的な宗教集団の犯罪と断じて忘却してはならない。13人に死刑が執行され、「生き証人」は国家の意思で消された。私たちは本書に描かれる「解明された事実」から学ばなければならないことがあるはずだ。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ