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ふぇみんの書評

脱原発の運動史 チェルノブイリ、福島、そしてこれから

安藤丈将 著

    脱原発の運動史 チェルノブイリ、福島、そしてこれから
  • 安藤丈将 著
  • 岩波書店2700円
 福島第一原発事故以降、日本の反・脱原発運動史は、内外の広範な人びとに関心をもたれている。「3.11」後の脱原発運動については多くの議論があったが、「3.11」以前の運動は語られていないことに著者は気がつく。当時の運動とは何だったのか、どんな遺産があるのか、が本書のテーマ。  1986年4月の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故に衝撃を受けて、日本で女性を中心に「反原発ニューウェーブ」運動が街頭や地域で展開された。著者は運動に参加した女性たちを訪ね、話を聞く。彼女たちはいかにして私的に見える問題を他者と共有し、しかも自分たちだけの問題にとどめるのではなく、政治や社会のあり方を考えることにつないだのか。その運動スタイルに「強さ」と「やわらかさ」を発見し、強く興味をひかれる。  著者は1976年生まれの男性政治社会学者。職場、家、保育園を往復する毎日。「日々の事柄で手一杯」な中で本書を書き上げたそうだ。(和)

夢見る帝国図書館

中島京子 著

  • 夢見る帝国図書館
  • 中島京子 著
  • 文藝春秋1850円
 『小さいおうち』の著者による心躍る図書館の小説。作家志望の「わたし」が、上野公園で奇天烈な喜和子さんと知り合う。この2人の現代の物語と、明治期の帝国図書館を主人公とする時空の異なる2つの物語が同時進行する。  本があふれる喜和子さんの小さな家に連れていかれ、“図書館の本”の話を書いてほしいと託されるわたし。一方の「夢見る帝国図書館」とは。明治の新政府が近代国家になるには図書館が必須と建設を進めるが、震災や戦争や財政難や頭の固い役人に前途を阻まれる…。  喜和子さんにつながる人々がなんとも魅力的。彼女のフシギな人柄は、戦争体験や、強い家父長制社会の複雑な環境が関わる。いつの間にか仲良くなった、わたしと喜和子さん。喜和子さんの娘や孫娘の登場。女同士のつながりにほっとする。喜和子さんはたくさんの本を読んで自分の血肉にした人だ。“図書館は人を育てるところ。私を育て直すところ”という言葉が胸に沁みる。(三)

トラウマを負う精神医療の希望と哀しみ 摂食障害・薬物依存・自死・死刑を考える

大河原昌夫 著

  • トラウマを負う精神医療の希望と哀しみ 摂食障害・薬物依存・自死・死刑を考える
  • 大河原昌夫 著
  • インパクト出版会2000円
著者は精神科医で、アルコール・薬物依存症、摂食障害の家族会の運営にも長年携わってきた。精神医療を軸にさまざまなことに思いを巡らせたエッセイだ。患者をはじめ出会った人々への感謝、迷い苦しむ人々への温かいまなざし、真摯で深い考察によって綴られた言葉にしばし癒やされた。  DVなどの暴力は加害者と被害者だけでなく、それを取り巻く人間のネットワークの中で成立していること。暴力のおおもとは国の権力装置にあり、刑務所の待遇や刑罰のあり方と、暴力の様態などが無縁ではないという著者の考えに同感だ。  死刑という国家による計画的殺害行為、被害者感情、殺人へ至る気持ちなどを考えることは、孤独と自死を遠くから眺め返す作業に通じるという。  回復への希望に共感しながら読み終えた時、一人一人の命の重さと愛おしさが込み上げてきた。(う)
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