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ふぇみんの書評

おんなたちは鬼になる 消費者運動、原発、平和

富山洋子、神田浩史 著

    おんなたちは鬼になる 消費者運動、原発、平和
  • 富山洋子、神田浩史 著
  • 解放出版社1400円
 日本消費者連盟で長く活動する富山洋子さんの、原発事故後の思いをまとめた書。2011年9月の脱原発集会で武藤類子さんが「東北の鬼になって」と語った言葉に衝撃を受け、タイトルに入れたという。  富山さんのぶれない生き方には圧倒される。東京電力料金一部不払い、その不払いを不当に取り上げた朝日新聞を読まない―。足尾鉱毒事件の田中正造に学び、反原発運動の中で出会った女たちと手をつなぐ。まやかしの運動には大きな声で異議を唱える。たとえば自然エネルギーへの評価さえ手厳しい。風土性を生かした「循環型の再生可能エネルギー」であるべきだと主張。地域住民の自治を基盤にし、資源を枯渇させることなく、循環させる暮らしを創出するために、人々の知恵と努力と実践が求められると訴える。後半の対談では「住民自治条例」の制定に向けた思いを熱く語る。富山さんの蒔く種はあまりに多いが、少しでも受け継いで育てていきたい。(栄)

女たちのテロル

ブレイディみかこ 編

  • 女たちのテロル
  • ブレイディみかこ 編
  • 岩波書店1800円
 大正期日本のアナキストで、大逆罪で有罪となった金子文子。英国で女性参政権を求めて闘ったサフラジェットの武闘派で、ダービーで国王の馬に突進して抗議死したエミリー・デイヴィソン。アイルランドの1916年蜂起の際のスナイパー、マーガレット・スキニダー。この3人の伝記エッセイ。著者は、緊縮財政で人々の暮らしがぶっ壊れた英国の地べたから言葉を紡ぎ、発信してきた。だからこそ3女性と出合った。著者の共感と共鳴に充ち満ちた本だ。  3人は底辺から思想と言葉を生み出し、自分に忠実に生きた。机上の思想にも日和見主義にも与せず、国家と対峙しても一歩も引かない。全編著者独特のパンクな文体が炸裂し、3人の生き様を鮮やかに蘇らせた。同時に3人が求めた理想社会は、100年後に生きる私たちの目指すべき未来と重なる。その先見の明にも驚かされる。  彼女らのパンクな精神は、差別と暴力にいまだ満ちた世界を生きる私たちに今こそ必要だ。(登)

検証「戦後民主主義」 わたしたちはなぜ戦争責任問題を解決できないのか

田中利幸 著

  • 検証「戦後民主主義」 わたしたちはなぜ戦争責任問題を解決できないのか
  • 田中利幸 著
  • 三一書房2800円
人権尊重とは相容れない天皇制ファシズム国家が引き起こした侵略戦争における数々の残虐行為。しかし東西冷戦に向かう中、戦勝国の一方の思惑により、加害と被害の両面を隠蔽・免責する仕組みが作られた。天皇を現人神から象徴としながら、観念的な国体の温存を許した憲法第1章と2章9条である。広島市大の平和研究所を牽引してきた歴史学者が、戦争責任と向き合わない日本の病理をここに見出す。  過去への反省を遠ざけ、聖戦論の台頭を招き、戦争責任を議論することがタブーとなり、謝罪や補償を拒む感情が生まれた。正義を求める国内外からの要求に対し、これらを拒絶する政府と大衆のヘイト。なんと時代錯誤的な回帰現象であろうか。解決の糸口は、平和憲法に内在する矛盾と向き合い、浄化・純化することであり、戦後民主主義をさらに後退させようとする「改定という名の復古主義」など笑止千万である。多角的な視点は、まさに著者ならではのもの。(た)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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