安保法制下で進む!先制攻撃できる自衛隊
山本章子 著
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安保法制下で進む!先制攻撃できる自衛隊
- 半田滋 著
- あけび書房1500円
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安保法制の施行から3年。安倍政権の6年で「国家主義的な国家に作り替えられた日本」の中で、「ほとんど軍隊」となった自衛隊の現状が具体的に描かれる。
米軍と自衛隊との共同訓練や自衛隊基地の米軍使用が増加、日米一体化は猛烈なスピードで実現化している。導入が検討されるイージス・アショアとF35戦闘機の問題点、安保法制下で行われた南スーダンPKOの実態、公表されないまま行われる米軍防護…。
加えて、安保法制を反映した防衛大綱により、米国の攻撃型武器の爆買が進む。イージス・アショア取得費1基1202億円に対し、2019年度予算で抑制される社会保障費は1200億円。F35戦闘機の1機113億円は113カ所の認可保育所を建設できる金額だという。
専守防衛の基本政策はすでに大きく揺らいでいる。自衛隊が憲法に書き込まれれば、徴兵制もありうると著者は指摘する。
自衛隊の今を知り、改憲をはね返していくための必読の書。(き)
- 強制不妊 旧優生保護法を問う
- 毎日新聞取材班 著
- 毎日新聞出版1600円
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旧優生保護法の下、障害などの理由で不妊手術を強制された被害者たちが、各地裁に国賠訴訟を起こすまでを追ったドキュメント。毎日新聞のキャンペーン報道「旧優生保護法を問う」の取材班がまとめた。
取材班は被害者やこの問題を長年にわたり告発し続けた女性たちや研究者に話を聞き、自社の報道を反省し、記録や資料を求め全都道府県を対象にアンケートと聞き取り調査を始めた。関係者の努力はもちろんのこと、粘り強い報道が、今年4月の「優生手術等を受けた者に対する一時金支給法」の成立につながった面もあると思う。しかし、この法や仙台地裁の判決では、国の法的責任への言及はない。
本書が問うのも、この問題が国家による「人権侵害」だということ。障害への差別・偏見や「優生政策」は、出生前診断という形で生き続けている。優生保護法の問題を多角的に捉えた本書は、社会の中に潜む優生思想や国家権力の怖さを突き付けてくる。(よ)
奄美 日本を求め、ヤマトに抗う島 復帰後奄美の住民運動史
斎藤憲、樫本喜一 著
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- 奄美 日本を求め、ヤマトに抗う島 復帰後奄美の住民運動史
- 斎藤憲、樫本喜一 著
- 南方新社3800円
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奄美群島は敗戦後米軍の施政権下となる。1953年に復帰したが、復帰後の奄美には本土で厄介扱いされた巨大石油基地や核燃料再処理工場の計画が次々に持ち上がる。奄美の人々はこれを毅然と追い払った。本書は、新聞・雑誌、議事録、住民からの聞き書きで奄美の住民運動史を活写している。
奄美住民運動はなぜ勝てたのか。奄美群島は江戸時代に薩摩藩の侵攻で植民地的収奪を受けた。圧政で飢餓に陥るが、2度にわたる一揆で抵抗した。復帰に向けて99.8%もの復帰署名を集めている。政府の復帰事業で、小学校の改築には統廃合が条件とされたが、地域の人々は“同盟休校”でこれに抗議した。小学校は、ハブの血清や消防車を備えた地域センターだったからだ。奄美群島の地では、人々が一丸となって闘った記憶が深く地域に染み込んでいる。
陸上自衛隊の駐屯地新設やミサイル部隊の配備が進むなか、住民運動の歩みから奄美の歴史を振り返る一冊だ。(公)