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ふぇみんの書評

なんにもなかった 戦中・戦後の暮しの記録 拾遺集 戦後編

暮しの手帖社 編

    なんにもなかった 戦中・戦後の暮しの記録 拾遺集 戦後編
  • 暮しの手帖社 編
  • 暮しの手帖社1700円
「暮しの手帖」70周年を記念して昨年出版された『戦中・戦後の暮しの記録』の続編。2017年に原稿を募集し、全2390通の投稿から収録されており、直前出版の戦中編のタイトルは『戦争が立っていた』。今も不朽の、1968年出版『戦争中の暮しの記録』の未収録原稿も掲載されている。  集まった原稿は、当時3歳~10代前半の人たちの述懐や、親への聞き書きもある。劇的な体験や日本軍加害の話はない。ただ市井に生きた人が体験した、戦争という非日常の日常=暮らし、が綴られる。死があふれ母や弟を亡くしても涙が出なかった男性、妹と2人でどう生きるかを考える12歳の少女、疎開対象にならなかった障害児、戦後の飢餓、引き揚げでぽろぽろ死んだ小さい人たち-。  一人一人の根底にある「誰が何のために戦争を?」との憤り。ある父は「気づいたらどうにもならないところにきていた」と。"今"に目をこらし抗うことの大切さを思い、身が引き締まる。(登)

農学と戦争 知られざる満洲報国農場

足達太郎、小塩海平、藤原辰史 著

  • 農学と戦争 知られざる満洲報国農場
  • 足達太郎、小塩海平、藤原辰史 著
  • 岩波書店2500円
満蒙開拓団の悲劇的終焉を描いた書は数多あるが、本書は学問としての農業と農業政策のつながりを論ずる点が新鮮であるだけでなく、極めて重要な問題を示唆する。  ドイツでは、第1次大戦の敗因の一つを食料政策の失敗とする思想が起き、それを受けた日本は、食料確保を外地に求め、大陸侵略を開始。「満蒙は日本の生命線」は、戦争遂行のための食料供給体制とも重なっていく。食料が戦争にとって必要不可欠な要素となる中で、農政はその重要な歯車として機能した。農学者は疲弊した農村救済の理論を実証するための場を満蒙に求め、官僚と癒着し、省庁間の利権争いの中で変容していく。  実習という名目で送り込まれた農学生たちの悲劇。その一方、農学者たちは戦後を悠々と生き延びた。学問の担い手は、現状に追随するのではなく、現状に対して批判的でなければならないというくだりを、軍学共同に取り込まれつつある大学人は忘れてはならない。(た)

朝鮮戦争に「参戦」した日本

西村秀樹 著

  • 朝鮮戦争に「参戦」した日本
  • 西村秀樹 著
  • 三一書房2500円
 1952 年6 月に大阪で起きた「騒擾」事件と言われる「吹田事件」と「枚方事件」を通し、朝鮮戦争を考える書。著者は長年事件に関する証言を集めた元放送記者。  50 年6 月に勃発した朝鮮戦争で日本は米軍の兵站と基地を担った。それに対して同胞と祖国を案ずる在日韓国・朝鮮人と日本人労働者が即時休戦や軍事品輸出反対を掲げ、大規模な抗議行動を行ったのが両事件。戦地に向かう在日米軍が九州・佐世保に集結。敵機が飛来し、灯火管制や空襲警報が発令された。戦争の記憶が生々しい時代だ。海上保安庁が米軍の要請で兵器等の海上輸送を行い、機雷除去を担った海保職員が戦死。戦後第1 号の戦死者となった。遺族は政府から真実を口止めされたという。日赤の看護婦も「赤紙」を受け取り、野戦病院に配属された。まさに朝鮮戦争「参戦」状態であり、明確な憲法違反だった。 だが現在は有事法制と安保法制があり、改憲されなくても同様の「参戦」は可能なのだ…。(三)
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