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ふぇみんの書評

いま、朝鮮半島は何を問いかけるのか 民衆の平和と市民の役割・責任

木下ちがや 著

    いま、朝鮮半島は何を問いかけるのか 民衆の平和と市民の役割・責任
  • 内海愛子・中野晃一・李泳采・鄭栄桓 著
  • 彩流社2000円
南北朝鮮・米朝首脳会談は、朝鮮戦争終結、非核化のプロセスを進め、大法院判決は強制動員―植民地支配の清算をもう一度突きつけた。朝鮮半島はいま、これまでどおりでは通用しない対応を日本に迫ってきている。  しかし日本は、そのプロセスから取り残され、未清算のままにしてきたことを棚に上げて「蒸し返すな」と言い募るだけ。なぜなの?ニッポン。  本書の中で鄭栄桓は言う、「結局のところ日本の戦後の『平和』というのは朝鮮が戦争状態にあることから利益を得てきた平和だからではないですか」と。冷戦-日米同盟にどっぷり浸かったままできた「平和」、植民地支配責任を放擲したままの「民主主義」、それではやっていけない時代が来たのだ。  その時代の市民の責任は何か?「もう一度憲法9条の平和主義を鍛え直さなければならない」(鄭栄桓)との言葉が重い。(喜)

あわいゆくころ 陸前高田、震災後を生きる

瀬尾夏美 著

  • あわいゆくころ 陸前高田、震災後を生きる
  • 瀬尾夏美 著
  • 晶文社2000円
語られることを伝えていこうとする人はたくさんいるけれど、「語れなさ」をテーマに震災の記憶を綴ろうとするアーティストの著者に興味を抱いた。  東日本大震災のボランティアで岩手県陸前高田市に向かった著者に、作品を作りたいと思わせたのはなんだったのか。震災前に確かにそこにあったなにかを、出会った土地の人びとがとつとつと話す物語からたぐりよせようとする。過去と現在が混ざり合う「あわい」を言葉で記録する。日記のような形を取りつつも、詩として読みたい言葉が並び、散りばめられた絵や写真にさらなる想像力が育まれる思いがする。  年月を経て、復興工事も進む。復興という前向きな言葉の陰で、土地の人びとは過去の記憶を手放さざるをえない。語れなさが「二度目の喪失」をもたらす。彼女は死者や生き続ける人びとと、形なきものの存在をまさぐりながら継承を続けるのだろう。改めて震災後の年月の重みを感じる。(室)

在日朝鮮人とハンセン病

金貴粉 著

  • 在日朝鮮人とハンセン病
  • 金貴粉 著
  • クレイン2000円
植民地期に来日し、過酷な労働を強いられ、環境や栄養状態も悪い中で発病した多くの朝鮮人。ハンセン病療養所の在日朝鮮人入所者の割合は一般社会に比べて高かった。本書は国立ハンセン病資料館・学芸員の著者が、在日朝鮮人ハンセン病患者・回復者がどのように療養所で生き抜いてきたかに焦点を当て論じた貴重な書だ。  在日入所者は病に対する偏見・差別だけでなく、療養所の“序列”や、国民年金法での国籍条項などの差別、祖国の分断・戦争などの歴史に翻弄され、苦難の道を歩んできた。著者は資料から丁寧に証言を拾い、各療養所で聞き取りを行い、在日入所者の切実な叫びや 個々人の人生を書き記す。入所者の活動の写真、詩・短歌、陶芸の作品などからも、苦痛に耐えながら国や社会に対して団結して闘い、文芸や芸術で才能を開き、たくましく、豊かに人生を切り拓いてきた在日入所者の姿がみえてくる。知らなければいけない史実が詰まった本書に胸が熱くなる。(ぱ)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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