WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

ヒョンナムオッパへ 韓国フェミニズム小説集

チョ・ナムジュほか 著 斎藤真理子 訳

    ヒョンナムオッパへ 韓国フェミニズム小説集
  • チョ・ナムジュほか 著 斎藤真理子 訳
  • 白水社1800円
 韓国初、「フェミニズム小説集」と銘打った(日本にはまだない)本書。7人の30代~40代の女性作家による小説の多彩さと面白さに、どんどん引き込まれていく。  彼氏からの精神的支配に気づく女性を描いた、『キム・ジヨン』で知られるチョ・ナムジュ「ヒョンナムオッパへ」は本紙今年3月5日号で触れた。チェ・ウニョン「あなたの平和」は家族から使用人の如く扱われ続けた母が、(息子でなく)娘の“毒母”となり、息子の結婚相手を自分の下に置こうとするが…という恐ろしくも悲しい話。女性学を学んだ娘の内なる性差別もリアル。キム・ソイルの「更年」もすごい。更年期真っ盛りの母が、思春期真っ盛りの息子の性欲処理方法に、夫同様の男の身勝手さをみる…。刑事もの、サスペンスもあり、異生物間シスターフッドを描いたSFは初めて経験するほっこり感だ。  フェミニズムを経るからこその、豊かさ、生々しさ、真の信頼や愛。病みつきになる。(登)

もう一人の彼女 李香蘭/山口淑子/シャーリー・ヤマグチ

川崎賢子 著

  • もう一人の彼女 李香蘭/山口淑子/シャーリー・ヤマグチ
  • 川崎賢子 著
  • 岩波書店2400円
李香蘭の名を聞いたことがある人は多いだろう。しかし「彼女」の名前はひとつではない。女優や歌手として活躍し、戦後はジャーナリストや国会議員にもなり、戦中・戦後の激動期に3つ(いや、それ以上)の名前を使い分けて生き抜いた姿はダイナミックだ。  著者はアメリカの公文書館で彼女に関する多くの公的資料を探し、李香蘭(主に戦中に使った名前)の自伝の内容との齟齬を見つける。彼女は日本人実父と中国人養父の下、長く中国で暮らし、戦中、旧満州でいくつもの映画に主演。完璧な中国語で中国人女性を演じ、戦争のプロパガンダにも利用された。また中国での生活は実父共々、情報戦の一端を担っていたと著者は推測する。戦後はハリウッドにも進出し、米国の反共特務機関との関わりもあった。  華やかだが努力の人で、大河の流れに沿ったり逆らったりしながらの人生は、いまだに謎が多い。彼女の存在から見える社会や歴史の姿も実に興味深い。(三)

シベリア抑留者への鎮魂歌

富田武 著

  • シベリア抑留者への鎮魂歌
  • 富田武 著
  • 人文書院3000円
 本書はソ連研究者の著者がシベリア抑留に関して出版した3冊目の本だ。ソ連本土での抑留者は57万人、うち死亡は4万6千人。公文書、回想録、フィールドワークから抑留の実態に迫る。  特筆すべきは、1945~47年にかけて銃殺刑判決を受けた日本人について、その名前、罪状、軍事裁判の実態を明らかにしたこと。  また、スパイ容疑の中村百合子、詩人・石原吉郎、広島の画文家・四國五郎の3人の、それぞれの抑留と人間像を描く。  冷戦時の政治的対立のため、体系的な抑留研究は緒についたばかりという。ペレストロイカ後の公文書公開でロシア人研究者による研究が進展、日本でシベリア抑留研究会が発足するのは2010年だった。  著者は残る課題に、ドイツ人やソ連人捕虜との比較、南樺太・千島や北朝鮮、旧満州地域での抑留、女性抑留者の実態、帰還者を巡る精神史などをあげる。全貌の解明のためにも厚労省が管理する名簿の早期公開が求められる。(ね)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ