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ふぇみんの書評

飢える私 ままならない心と体

ロクサーヌ・ゲイ 著 野中モモ 訳

    飢える私 ままならない心と体
  • ロクサーヌ・ゲイ 著 野中モモ 訳
  • 亜紀書房1900円
 著者は、ピンク好きでも男好きでも、矛盾を抱え分断を超え「バッド・フェミニスト」を名乗ろう!という著作で知られる、ハイチ系米国人のフェミニスト作家。本書は身長190cm最重260kgの体を持つにいたった著者の少女時代から現在までの、ひりつくような魂の遍歴を綴ったエッセイだ。  きっかけは、思いを寄せた少年とその友らに12歳でレイプされたこと。破壊された心と体は、食欲で束の間の安心を得た。巨大化した体はやがて周囲から蔑まれ、暴力的に介入されもするが、根本にあるのは"無価値な自分"を絶えず罰する心で、時にDVのような関係性を自ら引き寄せる。  "巨体あるある”の筆致に笑ってしまう場面もあるが、著者は巨体によって他者への「より大きな感受性」を得たと。フェミニズムという思想のあるべき豊かさを提示し、巨体でなくともフェミニズムを知っていても、自分では"ままならない”心と体を持たされる全女性たちに向けた書だ。(登)

新しいアジアの予感 琉球から世界へ

安里英子 著

  • 新しいアジアの予感 琉球から世界へ
  • 安里英子 著
  • 藤原書店1800円
琉球弧の島々の御嶽などの聖地を巡り、リゾート開発をルポし、いま「沖縄恨之碑の会」の共同代表を務める著者が、この間書いた中から編まれた10年ぶりの新著。  民族や国家を超えた共同体を志向する第一章。第二章は、アイヌ民族のユーカラ、台湾原住民文学、朝鮮詩集、そして津島佑子まで、琉球からの視座で紐解く文学の世界。また、祭祀の中の女性像としてのノロとユタ、女性中心から琉球王府による男性原理への流れを歴史的に追う。  文化的な面だけではない。復帰後、沖縄に吹き荒れた開発の嵐に言及し、「施政権返還が軍事基地の継続を前提としていた以上、沖縄の経済振興策は基地問題と密接に結び付き、沖縄開発庁は日米両政府の調整機能を有した」と分析。先島への自衛隊配備にも触れる。  人が生きている場としての共同体を希望とし、理念として提示された名護市の「逆格差論」の具体化が沖縄自立への道とする著者の、凛とした立ち姿が見える。(き)

統べるもの/叛くもの 統治とキリスト教の異同をめぐって

新教出版社編集部 編

  • 統べるもの/叛くもの 統治とキリスト教の異同をめぐって
  • 新教出版社編集部 編
  • 新教出版社2200円
ぶしいほど光るシルバーのカバーだ。この光の中に入っていくのか、光の裏側に入って行くのか、6人の論者が現れる。  キリスト教がその規範を課してきたことや、社会の権力に背いてきたことを背景に、Ⅰ章ではレズビアンを公言する牧師の堀江有里さんら3人がクィアをどう捉えるか議論する。生き延びるために既存の制度を利用すること、一義的になりがちなアイデンティティーを表す言葉を使って闘わざるを得ない場面、はある。そこに立ち現れる矛盾にどう向き合ってきたのか、こなかったのか。  Ⅱ章ではアナキストで仏文学者の白石嘉治さんら3人が登場。天皇制やキリスト教に抵抗して生きるには、統治ではなくケアが優先されることがアナーキズムだなどと議論する。これにはヒロイズムやパターナリズムへの批判が必要だろう。  キリスト教に対する視座も論点も異なり、闇の中に入っていくように思えた。しかし、それこそ本書の目論見ではないか。(み)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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 郵便振替:00180-6-196455
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