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ふぇみんの書評

娘について

キム・ヘジン 著 古川綾子 訳

    娘について
  • キム・ヘジン 著 古川綾子 訳
  • 亜紀書房1900円
フェミニズム興隆真っ只中の韓国で、1983年生まれのクィア文学女性作家による小説だ。結婚・出産で仕事を辞め、一人娘の子育てに邁進し、今は夫を亡くし介護労働に就く60代の「私」が主人公。30代半ばで大学非常勤講師の一人娘はレズビアン。ある日、「私」と娘と娘の連れ合いとの共同生活が始まる-。  普通に生きたい「私」は、社会の不正を"自分事"と声を上げる娘らを、受容も許容もできない。娘への未練、愛情、寂寥感、絶望と罪悪感、羞恥心、娘の連れ合いへの怒り…、「私」に渦巻く複雑な感情の嵐が描かれるが、筆力と「私」がどこか親近感のある存在だからか、不思議と嵐に巻き込まれてしまう。「60代、キム・ジヨン」?   ところがある事件を機に「私」は、不正義を"自分事"と捉えて異議を唱え行動する。「私」が変わり、めでたし…とならないのが憎いところ。でも、物語の先にかすかな希望の光がある…さわやかな読後感を満喫した。(登)

情報公開賛歌 知る権利ネットワーク関西30年史

知る権利ネットワーク関西 編

  • 情報公開賛歌 知る権利ネットワーク関西30年史
  • 知る権利ネットワーク関西 編
  • 発行 花伝社 発売 共栄書房1700円
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編者は大阪中心に、医療、教育、政治倫理、労働問題などに取り組む市民や情報公開制度の研究者、ジャーナリストが参加し、1988年に発足したグループ。本書は、各運動に取り組む中で市民の「知る権利」を駆使、その確立に奮闘した30年の記録である。  表題は元代表の公認会計士熊野実夫の言葉。熊野は言う。「情報が社会を動かす」「何年に1度の投票という受動的参加から自発的参加へ。情報公開はこの参加の第一歩である」。公文書の公開を求め最高裁まで争っただけでなく、各自治体への「情報公開請求ツアー」は自治体間の「知る権利」の認識の違いを浮き彫りにし、「壁」を改善させてきた功績がある。  公文書の改ざん、隠ぺい、フェイクニュースが横行しているが「知る権利とは何か」「知る権利はどのようにして確立してきたのか」「権利は使わなければ絵に描いた餅に」「民主主義社会の根幹にある知る権利の重要性」を気付かせる貴重な30年史だ。(二)

星をかすめる風

イ・ジョンミョン 著 鴨良子 訳

  • 星をかすめる風
  • イ・ジョンミョン 著 鴨良子 訳
  • 論創社2200円
太平洋戦争中の福岡刑務所。朝鮮人の囚人に対し容赦ない、悪名高い暴力看守が殺された。事件の調査を任されたのは若い看守。なぜ殺人事件が起きたのか―。  ミステリアスな事件から始まる物語は、刑務所が舞台。検閲官であった看守と詩人の囚人を軸に進んでいく。詩人は朝鮮語で詩を書き、治安維持法違反の疑いで逮捕・収監され、獄死した尹東柱。本書は韓国の国民的詩人と彼の詩を題材に書かれた小説。韓国の人気ドラマ『根の深い木』や『風の絵師』の原作者である著者ならではの大胆な展開で、韓流ドラマを見るように楽しめる。  フィクションではあるが、帝国主義や戦争の愚かさとともに本書に浮かび上がるのは、人間の深い感情や人生に影響を与える詩や文学、そして言葉の力。「序詞」「星をかぞえる夜」など、生命を謳い魂を揺さぶる清冽な尹東柱の詩があらためて心に染み入る。死因は不明だが、27歳での獄死は事実。日本はなんて罪深いのだろう…。(り)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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