WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

自分がきらいなあなたへ

安積遊歩 著

    自分がきらいなあなたへ
  • 安積遊歩 著
  • ミツイパブリッシング1700円
タイトルを読んで心の深いところを突かれた。この社会では、男女、障害の有無、セクシュアリティー、人種…あらゆる違いが上から見下げる人と見下げられる人を作り出し、分断し、見下げられた人に自己否定感を植え付ける。  著者は、生まれつき骨が弱い障害を持つ。幼少から「健常」に近づく手術を繰り返され、自己否定感いっぱいで死にたいとすら思い、酒やたばこで体を傷つけた著者が、障害者自立生活運動とピアカウンセリングに出会い、どのように社会を変え、どのように自分を丸ごと愛し、人との真のつながりを紡ぎ直したかが綴られる。怒りや悲しみをピア(仲間)カウンセリングの仲間と共に涙で洗い流し、健常者の“王子様”と結婚したい願望があったことや、セックスやオナニーのことも余さずに。  フェミや運動の目的が、自分を解放し愛することにあると思い出させてくれた。本書は、この社会に生きる全ての人への遊歩からのプレゼント。(登)

今、言わねば 戦後編集者として

松本昌次 著

  • 今、言わねば 戦後編集者として
  • 松本昌次 著
  • 一葉社1800円
戦後60年余、編集者として、花田清輝、埴谷雄高、丸山眞男らにかかわった著者が、2013~17年に「レイバーネット」などに寄せた文を収めたもの。亡くなる1カ月前の2018年12月に自ら出版を企画し、最期の病床にまでゲラを持参したという。  新聞や演劇、時事問題、安倍首相や政権への鋭い批判の数々。「護憲と反原発」が未来へ進む両輪とする著者はまた、徹底した反戦・反天皇制に立つ人としてあったのだろう。心に残る人と言葉の文章を収める章では、茨木のり子の、昭和天皇の「言葉のアヤ」なる発言を書く詩「四海波静」や「君が代」演奏に「私は立たない」と語る詩「鄙ぶりの唄」を紹介する。  一方、村上春樹がエルサレム賞を受け取るために赴いた彼の地で行った「壁と卵」のスピーチに対し、村上にはパレスチナの分離壁は見えないのか、沖縄は?福島は?と厳しく問う。  天皇代替わりに著者は何と言っただろう。共に考えたかった。(ね)

シベリア出兵 「住民虐殺戦争」の真相

広岩近広 著

  • シベリア出兵 「住民虐殺戦争」の真相
  • 広岩近広 著
  • 発行 花伝社 発売 共栄書房1500円 
シベリアと聞くと、抑留・引き揚げという“日本人被害”のイメージが浮かびがちだ。  ところが日本からシベリア各地に慰霊の旅を続けていた抑留体験者が、1991年に訪れたシベリア東部のイワノフカ村で、村長から「1919年に日本兵がこの村を襲撃して、村民293名を射殺・焼殺した。そのことを知っているか」と問われ、衝撃を受けた。  出兵という言葉もくせものだ。日本が連合軍として参加したシベリア出兵は、革命ロシアへの干渉戦争と言える。連合軍の撤退後も日本軍は7年も「出兵」を続けた。日本政府・軍部はシベリア東部に親日の傀儡政権樹立を目論んでいた。イワノフカ事件と逆に、日本領事館が襲われて在留邦人が殺された尼港事件もあった。「加害もあれば被害もあるシベリア出兵には戦争の原罪が横たわる」と筆者は書く。元毎日新聞記者が「戦争は殺人事件」の視点で記す本書は、シベリア体験の被害者意識を塗り替える一冊だ。(公)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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