憲法ルネサンス 個性、生きざまから再発見
共同通信社編集委員室 編
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憲法ルネサンス 個性、生きざまから再発見
- 共同通信社編集委員室 編
- インパクト出版会1800円
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本書は、共同通信社が2017年に国内向けに配信した通年企画の新聞連載から42本と番外編を収録する。ここに登場した人々の生きざまが憲法を体現しているといっていい。
発達障害者の居場所「ネッコカフェ」の金子磨矢子さんは、改正発達障害者支援法を、「大人の発達障害にも着目し、やっと生存権が認められた感じ」。こども食堂の先駆け・近藤博子さんは、「困難を抱えた子どもに食事をさせているだけと思われるのは困る。生きづらさを感じている子どもや人のことを思いやる社会を再構築するきっかけ」と語る。研究者の瀬畑源さんは「一人一人が天皇をかついでいる」ことを実感し、今こそ「天皇の活動の是非や範囲を冷静に議論すべき」と指摘する。ふぇみんに記事が掲載された、川崎の崔江以子さんや弁護士・猿田佐世さん、学び舎の山田麗子さんらも登場。
それぞれの人々の日常の「闘い」に憲法が息づき活かされていることを痛感する一冊だ。(き)
ジョルジュ・サンド 愛の食卓 19世紀ロマン派作家の軌跡
アトランさやか 著
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- ジョルジュ・サンド 愛の食卓 19世紀ロマン派作家の軌跡
- アトランさやか 著
- 現代書館2000円
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19世紀のフランスの作家で、男装の麗人、恋多き女といわれるサンドの評伝で、「食」という新しい切り口から彼女の思想や生き方を綴っている。著者はパリの日本語新聞で、作家と食をテーマにしたコラムを執筆中で、本書もその連載記事が基になっている。
サンドは自分の城館で、客人にふるまう「食」に情熱をかけ、家庭菜園をつくり自らも台所に立った。貴族の父と庶民の母の娘であった彼女は使用人と同じものを食べていたという。自然を愛し、日常の暮らしを大事にしながら、生活費を稼ぐため100篇も小説や戯曲を書き、性差別を訴え、自由に真剣に恋をした。生き方がとんでもなくかっこいい。
本書にはサンドゆかりの食のカラー写真とレシピ、ショパンをはじめサンドと関わった人々の肖像画などが載り、装丁が美しい。巻末には「サンドをめぐるパリの旅」の紹介も。ジャムやワインの話、サンドの力強い人生…至福の時を過ごせるお気に入りの本になった。(く)
9条の挑戦 非軍事中立戦略のリアリズム
伊藤真、神原元、布施祐仁 著
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- 9条の挑戦 非軍事中立戦略のリアリズム
- 伊藤真、神原元、布施祐仁 著
- 大月書店1600円
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自衛隊を憲法に明記する安倍9条改憲に対して「非軍事中立」を掲げ、弁護士2人とジャーナリストが著す。この議論にはじめて出会うだろう若い世代に向けていて、読みやすい語り口だ。
軍隊の保持が合理的かどうか、変化する国際情勢から解く伊藤。自衛隊が憲法に書き込まれれば人権の制限が増大する。攻められたらどうするのか。戦わず白旗をあげるべき、デモやストの非暴力で抵抗しようと言う。それが人的・物的にも被害は少ない。かなり究極の見解にも思えるが、ナチスに白旗をあげたパリ市を例にあげる。神原は9条に関する憲法学の学説を紐解き非軍事中立戦略を説く。布施はリアリズムが安全保障を考える上では重要で、例えば長い海岸線(地球1周の85%!)の防衛は超困難、島国ゆえ簡単には国外避難もできない、と。まさにリアル。
軍隊を持たないことが本当に「非現実的」なのか。本書は昨今の「護憲的改憲論」への応答だと述べる。(三)