WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

その後の福島 原発事故後を生きる人々

吉田千亜 著

    その後の福島 原発事故後を生きる人々
  • 吉田千亜 著
  • 人文書院2200円
 原発事故被害者・避難者の取材を続けてきた著者の新著。  賠償金や住宅支援を打ち切り、実害を「風評被害」と言いくるめ、リスクコミュニケーションという名の「放射能大丈夫」宣伝は、かつては県内向け、いまや世間一般に向けられる。「オリンピック・イヤーに避難者ゼロ」を目指す「復興」計画が被害者を追い詰める。  このままでは事故すらなかったことになるという危機感で著者は取材する。20mSvへの基準値変更、除染、拙速な避難区域解除と帰還政策、避難者の現状…。テーマは多岐にわたるが、それだけ事故の影響は多面的だった。いずれも当事者の声を伝えながら、問題を掘り下げる。  事故の責任は国と東電にある。それが被害者の「自己責任」にされる。事故によって変えられた人生、失ったふるさと。国と東電の法的責任を問い、被害者の救済を目指す集団訴訟の原告らの思いもここには記される。原発事故は終わっていない。多くの人に読んでほしい。(ね) 

不妊、当事者の経験 日本におけるその変化20年

竹田恵子 著

  • 不妊、当事者の経験 日本におけるその変化20年
  • 竹田恵子 著
  • 洛北出版2700円
 著者は、2000年代初期と2010年代初期に不妊治療を受けた当事者をていねいに調査。不妊治療に対する「躊躇」という感情をキーワードに、躊躇がどのように変容しているかを考察している(余談だが本書の装丁が素敵だ)。  20年の間に、不妊治療のリスクを、低く見積もったり気にしない人が増加し、晩婚による高齢出産のリスクを強く懸念する当事者が増えているという。当事者たちが編み出した躊躇へのさまざまな対処法が現在の不妊治療の普及のかたちを導くものとなり、一方で不妊治療が暴走することのないようブレーキの役目を果たしていたと分析。以前より豊富な情報量を得られるようになったが孤独に悩む当事者、「配慮に値する者」という新しいラベルで不妊にネガティブな視線を注ぎ続ける世間もみえてくる。不妊は個人だけが解決すべき問題ではない。治療の選択と結果が“自己責任”とされ、当事者の孤独と苦悩がより増すのではと心配になった。(ん)

セルツェ 心 遥かなる択捉を抱いて

不破理江 著

  • セルツェ 心 遥かなる択捉を抱いて
  • 不破理江 著
  • 発行 東洋書店新社 発売 垣内出版1300円 
千島列島・択捉島蘂取(シベトロ)生まれの山本昭平さんが語る、戦争末期から引き揚げまでの激動の2年間を著者がまとめた書。敗戦時、択捉島には約3600人が暮らし、北海道などから移住した漁業関係者が、アイヌの人々と混住していた。山本さんの語りは、現在墓参も制限される故郷への思いが溢れる。  千島には戦後すぐにソ連軍が進駐した。蘂取では家財等の供出は求められたが、住民の虐殺や強姦は起きず比較的落ち着いた生活だったという。山本さんは家に逗留した若い軍医から「セルツェ(心)」という歌を教わるなど、親しく交流をした。だがこれは希有な例だろう。  敗戦直前に山本さんは北海道・根室で空襲に遭い、父を亡くす。鮮明な空襲の記憶を語る場面から、凄惨な様子が目に浮かぶ。また、故郷から引き離されたつらい体験も、紛れもない戦争の歴史の一頁だ。読み手として、この戦争の記憶を受け継ぎたい。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ