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ふぇみんの書評

少年と罪 事件は何を問いかけるのか

ヘウレーカ1600円

    少年と罪 事件は何を問いかけるのか
  • 中日新聞社会部 編著
  • ヘウレーカ1600円
 「人を殺してみたかった」との殺人事件の加害少年の言葉に、私たちはどう向き合うのか-。厳罰化が進む少年法の、適用年齢の引き下げの議論がある今、本書は中日新聞が掲載した同名の長期ルポ連載を書籍化した。残虐で不可解な20以上の重大少年事件で、様々な当事者に聞き取りをしている。  記者が迫るのは、加害少年の内面や出所後の現実、被害者遺族・加害者家族の苦悩、捜査員や矯正・更正の現場に携わる人たちの思い。記者らが戸惑うのが、神戸連続児童殺傷事件の「少年A」を崇拝したり、「人を殺してみたい」と人を襲う少年らだ。丹念な取材はかれらが抱く空虚さに行き着く。果たして刑罰は機能するのか。さらに発達障害などの少年に適切な医療ケアシステムがないことや、再犯を防ぐ出所後サポートがないことなど制度の欠陥も浮かび上がる。  貧困、虐待、社会での居場所のなさに、私たちはどう応える? 厳罰化を叫ぶ前に、まず本書を読んでほしい。(登) 

ひとり

キム・スム 著 岡裕美 訳

  • ひとり
  • キム・スム 著 岡裕美 訳
  • 三一書房2000円
韓国政府登録の日本軍「慰安婦」被害者が1人になったとニュースが報じる、近未来のある日から物語は始まる。主人公の「彼女」は、中国東北部の慰安所に13歳から7年間も入れられ、93歳の今も誰にも経験を語ることなく、ひとりで暮らす。「彼女」はそのニュースを見て、「ここにもうひとり、生き残っている」とつぶやく。  韓国の女性作家による本小説は、「彼女」が凄惨な過去の記憶から失いかけたアイデンティティーを取り戻すまでの心の旅だ。  作者はこの小説を書く前に多くの慰安婦被害者の証言を読み込み、313もの証言が小説に盛り込まれた。読むのもつらい場面もあるが、50歳を過ぎて文字を習得した「彼女」が、「わたしもひがいしゃです」とたどたどしく書くところや「話して、そして死にたい」と思う描写には感動する。  韓国政府登録の慰安婦被害者239人中存命者は27人 (2018年8月現在)。小説設定の日になる前に真の解決が急がれる。(晶)

三竃島事件 日中戦争下の虐殺と沖縄移民

蒲豊彦 編著 浦島悦子、和仁廉夫 著

  • 三竃島事件 日中戦争下の虐殺と沖縄移民
  • 蒲豊彦 編著 浦島悦子、和仁廉夫 著
  • 現代書館2800円
三竃島(さんそうとう)事件と言われても、知っている人はこの国ではほとんどいないだろう。  三竃島、中国広東省沖の島。日本軍は日中戦争下、この島を中国本土爆撃の拠点とするために占領、航空基地を建設した。その過程で(1938年4月)、掃討作戦を強行し、2千人を下らない多数の住民を虐殺した(8千人超との説も)。1939年以降は、軍の糧食確保と防備のため島に沖縄から農業移民を送り込み、実質、植民地化した。もう一つの南京事件、もう一つの満蒙開拓団とも言える。それを丹念に掘り起こしたのが本書だ。  日本軍の侵略とそれへの抵抗、日本の敗戦、中国国民党軍の復帰、国共内戦と共産党軍の進攻という、三竈島の激動の歴史と、その中で翻弄された住民の姿が描かれる。それはヤマト世・アメリカ世と、苦難の歴史を歩んだ沖縄民衆の姿に重なる。沖縄移民の章は本紙連載の浦島悦子さんが執筆。東アジアの民衆の過去と現在を描いた労作である。(喜)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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