WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

植民地遊廓 日本の軍隊と朝鮮半島

金富子、金栄 著

    植民地遊廓 日本の軍隊と朝鮮半島
  • 金富子、金栄 著
  • 吉川弘文館3800円
 19世紀後半から20世紀前半まで、公娼制がなかった朝鮮の各地に、日本がどのように「日本式遊廓」をつくったのか―。本書は、「居留地遊郭」が開設され、「占領地遊郭」を経て、「植民地遊郭(植民地公娼制)」が普及するまでを丹念に調査し、分析している。  植民地遊郭は日本人軍人を含む在朝日本人男性のために、日本人娼妓と朝鮮人娼妓の2つの民族の女性の身体が提供された性的施設だった。“身体の価格”や待遇に民族序列があったという点も注視したい。日本は軍人らに「安全な身体」を提供する観点から、性病を防ぐための性管理政策を行う。この性管理政策が軍事支配を核心と する植民地支配を根底から支える支配技術だったという指摘に頷く。   在朝の日本人社会には、いかに性売買と性病が蔓延していたか。「慰安婦制度」は突然できたわけではない。戦争責任のみならず、性奴隷・性暴力の常態化、植民地支配などの責任問題が露わになる貴重な書だ。(り)

彼女は頭が悪いから

姫野カオルコ 著

  • 彼女は頭が悪いから
  • 姫野カオルコ 著
  • 文藝春秋1750円
2016年に起きた東大生5人よる女子大生への強制わいせつ事件を題材にした小説。東大生らは被害女性に「頭が悪い」「場を盛りあげろ」と飲酒を強要して全裸にし、殴打し、ラーメンを体にかけたりした。その後被害女性のほうが「東大生の将来を台無しにした」と中傷され、加害者は逮捕後も罪の意識がない。小説は薄皮をはぐように事件の本質を暴いていく。  小説は08年から事件までの、被害女性・美咲と、美咲と一時期交際した加害者の一人、つばさの日常から始まる。学力格差=経済格差の中、日々培われるつばさの尊大すぎる自負心。専業主婦の母によるケア、東大ブランドを称え群がる社会と女子、それらへの軽蔑…。美咲も、学歴や容姿ヒエラルキーの中で引け目、よき「女子」や「長女」の振るまい方を獲得していく。  加害者が特別なのではない。事件はこの社会の有り様の行き着いた先。自分にも巣くう意識があぶり出され、#MeTooの重要性に今一度思いを馳せた。(登)

家庭裁判所物語

清永聡 著

  • 家庭裁判所物語
  • 清永聡 著
  • 日本評論社1800円
家庭裁判所は来年、1949年の設立から70年を迎える。  家庭裁判所の設立にリーダーシップを発揮した「家裁の父」宇田川潤四郎、戦前に先進的な米国の家裁を視察した内藤頼博、初の女性弁護士の三淵嘉子などのほか、戦後の混乱期に「司法の理想を託し、あるいは少年や女性の権利を守りたいと願う」多くの人々が家裁を作り上げていく様子が、生き生きと描かれる。家裁の当初の標語は「家庭に光を、少年に愛を」。  1960年代後半の少年法改正(対象年齢の引き下げ、検察の関与強化)論議にも一章をさく。今また、「厳罰化」の声が上がるが、これは半世紀前と同じ議論であり、それでは問題は解決しないことはこれまでの歴史を見ても明らかだろう。  社会の変化の中で、当然ながら家裁の在り方や裁判官や調査員など、関わる人の考え方も変わらざるを得ない。しかし、家裁の「社会の中で弱い立場の人々を支援するという理想」を打ち捨ててはならないと痛感させられた。(き)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ