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ふぇみんの書評

植民地・朝鮮における雑誌『国民文学』

渡邊澄子 編著

    植民地・朝鮮における雑誌『国民文学』
  • 渡邊澄子 編著
  • 彩流社2400円
「国民文学」は、日本植民地下の朝鮮で、1941~45年に発行された、日本人文学者と朝鮮人文学者合作の日本語雑誌である。韓国では、親日派による日帝末期の皇民化、戦時政策の一環として強制された文学運動と位置づけられているようだ。著者は「国民文学」に度々登場した無頼派の作家、田中英光を中心に、日本人文学者による精神的・思想的侵略や戦後の作品をていねいに分析した。  徴兵奨励や「国語」教育の徹底などを書き、「内鮮一体」「皇民化」の浸透に取り組んだ田中は戦後、戦場小説や京城にいた時代を回顧し作品を書く。が、「魔窟に通う薄汚い性欲と酒浸りの醜態描写」が多い小説『酔いどれ船』など、「戦中の戦争使嗾の数々の言行への責任、懺悔を戦後作品にみることは私にはできなかった」と著者は強く批判。「本稿は(安倍首相の)歴史への無知さへの怒りを込めて検証した」とある。気迫ある文章で、加害責任に無頓着だった文学者たちを厳しく追及する好著。(ぱ)

わたしで最後にして ナチスの障害者虐殺と優生思想

藤井克徳 著

  • わたしで最後にして ナチスの障害者虐殺と優生思想
  • 藤井克徳 著
  • 合同出版1500円
 「やまゆり園事件」や「生産性」発言に象徴されるように、優生思想が再び公然と語られるようになった日本。長年障害者運動に携わり、自らも障害をもつ著者が、優生思想に基づき20万人以上ともいわれる障害者を組織的に虐殺したナチスのT4作戦を取材した経験から、この現実に警鐘を鳴らし、どのようにこの問題に向き合うべきかを問いかける。  虐殺の事実経過だけでなく、米国がいち早く優生思想を受容しナチスとの交流を続けていたこと、日本のみならず福祉国家の代表とされたスウェーデンでも優生政策により数多くの悲劇が生み出された事実などが、中学生以上が対象ということで平易な語り口で語られている。  社会のひずみの拡大は、私たちの誰もが抱える「内なる差別」や偏見といった心の闇も大きくする。著者の提起する障害者権利条約に基づく対抗戦略を含めて、社会全体に関する私たちの議論と行動が求められている。(ち)

神に守られた島

中脇初枝 著

  • 神に守られた島
  • 中脇初枝 著
  • 講談社1400円
 沖縄本島近くにある小さな島、沖永良部島。少女カミ、カミに恋心を抱く少年マチジョーやその家族を中心に、大戦末期から戦後の島を舞台にした小説。  日に日に島の暮らしが戦争に侵食される。晴れた日は「空襲日和」、家族の戦死、動員、食糧不足…。ある日特攻機が不時着し、「神」とされていた特攻兵が、半強制的に「神」と仕立てられていたと知る。米軍上陸間近と言われ、自決の準備に勤しみ、生きることを諦める大人たち。でもマチジョーたちの生命力は輝きを増す-。  全編、島の方言と、著者が島に通いお年寄りから聞き取った島唄に彩られ、心地よい。砂糖車を牛に引かせてカミが歌う唄、玉砕を覚悟した悲痛な唄遊び、子を失った親の悲しみの唄など胸にしみる。戦後、日本軍などに「だまされた」と思ったマチジョーの、今また「だまされはじめているのかもしれない」との気づきは読み手の心に深く刺さる。本土へ渡ったマチジョーと、カミの今後も読みたい。(登)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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