不道徳お母さん講座 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか
堀越英美 著
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不道徳お母さん講座 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか
- 堀越英美 著
- 河出書房新社1550円
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道徳教材、2分の1成人式、巨大組体操など、教科書や学校行事に組み込まれる「母性と自己犠牲」を、歴史を踏まえ読み解く。
明治期は小説が「有害」とされていた。富国強兵が国策の時代、文部省お墨付の児童書がつくられると、傲慢さや自分勝手を「やんちゃ」と許す「男らしさ」が形づくられ、「母」は戦争に進む国家の思惑を反映するべく利用される。
抗いようのない圧力は、感性と結びついて、巧妙に入り込み、高揚感や涙の中で、「嫌だ」と言えない状況に陥らせる。戦後、姿を変えても何度も登場するのは「母」だ。
昨今、「感動の盛り上げ」強制といわれる2分の1成人式だが、実は感動用にJ-POPが選曲され、文末を「~ね」「~よ」と書きかえる作文指導まで入るそうで驚いた。明治~戦後に続くコンテンツのネタバレ満載。もう感動しちゃった人は読まないほうがいいかも!?(梅)
「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。
小川たまか 著
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- 「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。
- 小川たまか 著
- バブックス1600円
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著者はネット上の「Yahoo!ニュース個人」等で、主に性暴力被害を取材し発信するフリーライター。性暴力に加え、世の中に蔓延する山のような女性蔑視をかろやかな語り口で説く。
しかし、ほんとに世の中、女の周りはむかつくことばかり。DV男が衆目の中、路上で彼女を殴る場面、性被害に遭った女性が警察に相談に行くのに、「(話を聞いてもらえるように)成人男性を伴って行け」と言うしたり顔、偏見に満ちた女性論を蕩々と論ずるオッサン、とか、もう読むに堪えない。
だがそれよりもそんな女をバカにした場面から、見て見ぬふりをして著者は逃げ出した、という、あるある話にチリチリと胸が痛む。後々考えると見過ごしてはいけないことを見過ごしてきた情けなさが思い出される。女性蔑視を「ほとんどない」ことにしたのはワタシなんじゃないかと気づく書だ。
経験を基に綴る著者の姿勢に共感しながら、黙らないぞ、と思う。ぜひ読んでほしい。(三)
- 学校に行きたくない君へ
- 全国不登校新聞社 著
- ポプラ社1400円
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学校の夏休みが終わる間際の子どもの自殺が社会問題となっている。本書は今年8月、そんな学校に行きたくない子どもたちに向けて発刊された。日本初の不登校の情報・交流紙である「不登校新聞」名物の、不登校当事者・経験者が自ら企画し取材するインタビューを収録したものだ。
登場するのは、樹木希林、リリー・フランキー、西原理恵子、宮本亜門、萩尾望都など著名人ら。不登校当事者・経験者らが悩みや苦しみから生まれる切実な質問を放つからこそ、著名人らの宝のような言葉に出会える。それは学校というシステムへの強烈な批判であり、社会を覆う重苦しい空気の中での身のかわし方だったりする。「本当の自分を見つけたい…そういうものはまとめて捨てたほうがいい。…一度も〈自分〉なんてなかった気がする」(田口トモロヲ)
学校に行きたくない子、子育て中の大人のほか、フツーに大人をやっていると思っている私も、ふっと心が軽やかになった。(登)